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まちづくりの成功事例8選。地域活性化につながる進め方と成功のポイント

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タイトル画像。各地のまちづくり

地域にある課題や資源を見つめ直し、暮らす人や訪れる人にとって、よりよい環境を育てていくまちづくり。

商店街のにぎわいづくりや空き家の活用、文化イベント、スマートシティ、復興など、その方法は地域によって異なります。

大切なのは、特定の手法を取り入れることではなく、住民、事業者、行政、地域団体などが課題や将来像を共有し、それぞれの役割を担いながら、その地域に合った方法を育てていくことです。

本記事では、ワークショップや遊休不動産の活用事例を含む全国のまちづくり成功事例8選をもとに、まちづくりの意味や背景、地域の関係者が連携して取り組みを進め、継続していくためのポイントを紹介します。

Index

まちづくりとは? 基礎知識と必要とされる背景

まちづくりは、道路や建物などのハード整備だけでなく、商店街のにぎわいづくり、コミュニティづくり、空き家の活用、景観保全、地域交通の持続、福祉の充実、防災・減災など、幅広いテーマを含む取り組みです。

ここでは、まちづくりの基本的な知識と、いま各地でまちづくりが必要とされる背景について解説します。

(画像提供:株式会社北九州家守舎)

まちづくりの定義

まちづくりという言葉には、法律で定められた明確な定義があるわけではありません。一般的には、国や自治体が主体となって、土地利用や道路・公園、建設のルールなどを定める「都市計画」などがトップダウン型の活動にあたります。これに対しまちづくりは、住民、行政、事業者、NPOなどが協力しながら地域の課題を解決し、暮らしやすさやにぎわいを高めるとともに、人々の活動や関係づくり、地域資源の活用などを通じて地域の未来像を育んていく、ボトムアップ型の活動をさします*1 *2。

また、町おこしとまちづくりは重なり合う部分もありますが、町おこしが観光振興や特産品開発、イベントなどによる地域活性化をさすことが多いのに対し、まちづくりは暮らしやすさや公共空間の使い方、地域の将来の空間のあり方まで含めて中長期的に考える点に特徴があります*3 *4。

まちづくりが必要とされる背景と課題

まちづくりの目的は、地域が抱える課題を解決し、暮らしやすさや地域の将来像を住民とともに描いていくことにあります。現在まちづくりが必要とされる背景には、少子高齢化や人口減少、地域経済の縮小、中心市街地のにぎわい低下、コミュニティの希薄化など、地域を取り巻くさまざまな変化があります*5 *6。

・少子高齢化・人口減少
少子高齢化や人口減少が進むと、地域活動や産業を支える担い手が不足しやすくなります。公共交通や買い物、医療などの生活機能をいかに維持するかが課題です。

・地域経済・中心市街地の衰退
地域経済の縮小や中心市街地のにぎわい低下は、商店街の空洞化や雇用機会の減少につながります。地域資源を見つめ直し、住民や事業者、行政が連携しながら、人が集まり続ける仕組みをつくることが必要です。

・地域コミュニティの希薄化
暮らし方や働き方が多様化するなかで、住民同士のつながりが弱まり、地域活動への参加が減っている地域も少なくありません。まちづくりには、住民同士が地域の課題を共有し、対話を重ねながら新たな関係性を育てていく役割もあります。

・空き家・遊休不動産の増加
人口減少や後継者不在などにより、空き家や空き店舗、遊休不動産が増加傾向にあります。放置すれば景観や治安の悪化にもつながるため、地域資源として活用する視点が求められています*7。

・防災・災害への備え
地震や豪雨などの自然災害が相次ぐなか、被災後の復興はもちろん、平時からの防災・減災を見据えたまちづくりも重要性を増しています*8。

監修者コメント|なぜいま新たな「まちづくり」が必要なのか

饗庭 伸さん

饗庭

人口減少時代には、人口が増えていた時代とは異なるまちづくりの考え方が必要です。人口が減って、遊休不動産が増えている状況は、見方を変えれば「チャンス」になります。土地や建物が不足していた時代は、何をやるにも空間を手にいれるコストがかかりましたが、いまは空き家や空き地をうまく組み合わせることで、いろいろなプロジェクトを簡単に試すことができます。たとえば、空き家を使ったコミュニティの拠点づくりや、空き地を活かした防災広場づくりなどです。空間をつくると人が集まってきて、そこからまちづくりの可能性が広がっていくこともあります。空間に余裕があるいまだからこそできる実験的な挑戦が、新たなまちづくりにつながるのです。

まちづくりの成功事例8選|地域別の取り組みポイント一覧

ここからは、日本各地のまちづくり成功事例を8つピックアップし、それぞれの概要と取り組みのポイントを紹介します。

※まちづくりの成功要因についての分析は、あくまで取り組みから考えられる可能性の一例として示しており、確定的な評価ではありません。

下の表は横方向にスワイプできます

アプローチの方法地域取り組み事例取り組みポイント
地域の魅力・にぎわいを高める岩手県雫石町『元祖!しずくいし軽トラ市』商工会・行政・住民・農家などがワークショップで意見を出し合い、身近な軽トラックを活かした市場を発案
静岡県焼津市シェア型図書館 みんなの図書館さんかく市民が本棚オーナーとして運営に参加する仕組みにより、商店街に継続的にかかわる人と交流を生み出した
長野県飯田市『いいだ人形劇フェスタ』地域の人形劇の伝統を、行政主催のイベントから市民主体の運営へと発展させ、1,500人以上のボランティアが継続を支える仕組みをつくった
データ・テクノロジーで地域課題を解決する福島県会津若松市スマートシティ会津若松会津若松市と会津大学、進出企業がICTとデータ連携基盤を活かし、健康・防災・農業など複数分野の課題解決につなげる仕組みを構築した
持続可能な仕組みをつくる富山県富山市岩瀬地区の再生地元の老舗蔵元が起点となり、古い建物を活かして食やクラフトの担い手を呼び込む仕組みをつくった
福岡県北九州市リノベーションまちづくり商店街関係者・行政の検討委員会が「小倉家守構想」を策定。民間主導の取り組みを通じて空きビルを再生、行政が手続き面で後押しする仕組みを整えた
暮らしやすいまちを実現する宮城県女川(おながわ)町シーパルピア女川民間主導で復興計画づくりの場を立ち上げ、官民で設立した会社が商業施設を継続的に運営する仕組みを整えた
香川県高松市高松丸亀町商店街地権者が土地を所有したまま貸し出し、商店街が設立したまちづくり会社が建物を運営する仕組みにより、合意形成と再開発を両立した

1. 岩手県雫石町|住民参加のワークショップが生んだ『元祖!しずくいし軽トラ市』

歩行者天国の道で、軽トラックの荷台に商品を並べ市場が開かれている

雫石よしゃれ通り商店街で開催される軽トラ市(画像提供:雫石商工会)

岩手県雫石町の『元祖!しずくいし軽トラ市』は、2005年にはじまったまちづくりの事例です。背景にあったのは、人口減少や大型商業施設の進出により、商店街のにぎわいが失われつつあったことでした。そこで、行政、商工会、商店主、住民、農協、農家などが組織の枠を越えてワークショップを行い、「一家に一台ある軽トラ」を商店街に並べる市場を発案しました。

現在は、5月から11月の毎月第1日曜日を中心に、雫石よしゃれ通り商店街で開催。新鮮な野菜や果物、海産物、工芸品などを乗せた軽トラが約60台も立ち並び、平均4,000から5,000人が訪れるイベントとなっています。身近な軽トラをユニークな発想で活用したことで、商店街のにぎわいや観光客との接点を生み出している事例といえるでしょう*9 *10。

<岩手県雫石町のまちづくり成功のポイント>

  • 商工会、行政、住民、商店主、農家、農協などが組織を越えて参加し、ワークショップからアイデアを育てている
  • 地域に身近な軽トラックを活用し、農産物や海産物、工芸品などを販売する場をつくっている
  • 定期開催により、商店街のにぎわいと、地域の人・観光客との継続的な接点を生み出している

2. 静岡県焼津市|本棚起点の商店街再生モデル「シェア型図書館」

壁一面の木製本棚に本がぎっしり並ぶ図書スペースで、土肥さんがカウンター越しに本を眺めている様子

「みんなの図書館 さんかく」の店内(撮影者:佐藤翔)

静岡県焼津市の焼津駅前通り商店街では、人通りの減少や空き店舗の増加が課題となっていました。そうしたなか、2020年に立ち上がったのが「みんなの図書館 さんかく」です。中心となったのは、当時静岡市内でNPOを立ち上げてまちづくり活動に取り組んでいた、焼津市出身の若者でした。

学生時代からまちづくり活動に携わってきた経験や、行政の委託事業を通じて感じた「より自由度の高い実践の場を自分たちの手でつくりたい」という想いから、この私設図書館を開設しました。

「さんかく」では、月額約2,000円を払って「一箱本棚オーナー」になった市民がお気に入りの本を並べて貸し出すことができ、訪れた人はその本を無料で借りられます。本棚オーナー自身も店番や運営にかかわることで、商店街を利用するだけでなく、つくる側の「当事者」になっていく点が特徴です。また、子どもから高齢者までの多世代交流や、地域外の学生が足を運ぶきっかけも創出されました。

「さんかく」は、こうした本棚オーナー制度を採用する「みんなの図書館」、通称「みんとしょ」の1号店です。本棚オーナーを介して住民が運営にかかわり合うこの「みんとしょ」モデルは、初期費用や運営コストを抑えながらまちの担い手を増やす画期的な手法として、現在では全国30地域120か所以上へ広がりを見せるなど、地域再生の新たなロールモデルとなっています。

<静岡県焼津市のまちづくり成功のポイント>

  • 本棚オーナー制度により、商店街に「自分ごと」としてかかわる人を増やしている
  • 本の貸し借りをきっかけに、多世代交流や地域外の学生との接点を生み出している
  • 空き店舗を活用し、民間主体で自律的に公共的な場を運営している

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3. 長野県飯田市|人形劇によるまちづくり『いいだ人形劇フェスタ』

夜の街で、ステージ上で操り人形を披露している

『いいだ人形劇フェスタ』は夜も街中で人形劇を開催している(画像提供:飯田市フォトライブラリー)

長野県飯田市は、伝統的な人形浄瑠璃をはじめ、江戸時代から人形劇文化が根づいてきた地域です。1979年には、ユネスコ国際児童年をきっかけに、行政と人形劇関係者が子どもたちに向けたイベント『人形劇カーニバル飯田』を立ち上げました。

1999年からは、市民主体の『いいだ人形劇フェスタ』として再スタート。現在は毎年8月初旬に開催され、プロ・アマ問わず国内外から約300劇団が集結します。期間中は学校や公民館、商店街さらには街角など、飯田市と近隣町村の約100か所が「劇場」へと変化し、1,500人以上の市民が運営を支えています。

半世紀にわたり市民の暮らしに根づいてきた文化的な営みであることが、この事例の特徴です。子どもから高齢者まで街全体で文化を育み、市民参加型の運営体制を構築したことで、地域文化への誇りや世代を超えた交流を育てています。

<長野県飯田市のまちづくり成功のポイント>

  • 地域に根づく人形劇文化を、まち全体で楽しむイベントとして発展させている
  • 行政主導のイベントから市民主体の運営へ移行し、継続できる体制をつくっている
  • 市民ボランティアが運営を支え、観客、演者、支える人がともに参加できる仕組みを育てている

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4. 福島県会津若松市|データ連携で進める「スマートシティ会津若松」

会津若松市にあるAiCTコンソーシアムの建物

会津若松市が進めてきたスマートシティの取り組みのなかで、2021年に設立されたAiCTコンソーシアム(一般社団法人AiCTコンソーシアム)(画像提供:会津若松市情報戦略課)

福島県会津若松市は、人口減少や少子高齢化などの課題を抱える一方、コンピュータ理工学専門大学である会津大学があり、人口は約11万人規模で、実証実験に適した地域でもあります。こうした強みを活かし、2013年から10年以上にわたって続けている取り組みが「スマートシティ会津若松」です。会津若松市と会津大学、進出企業でつくる「AiCTコンソーシアム」が中心となり、市民の利便性・快適性を保ちながら、仕事や雇用を生み出し、魅力的なまちをつくることをめざしています*11 *12。

具体的には、健康・福祉、教育、防災、エネルギー、交通など幅広い分野でICTを活用し、近年はデータ連携基盤を通じたサービス提供も進めています。なかでも、地元の農産物生産情報と飲食店や旅館などの需要をデータでつなぐ「需給マッチングサービス」の導入により、地産地消の推進や流通コストの削減といった具体的な成果を生み出しています。技術の導入自体を目的にせず、データを地域課題の解決に活かしている事例といえるでしょう*13。

<福島県会津若松市のまちづくり成功のポイント>

  • ICTを健康・福祉、教育、防災、交通など、暮らし全体の課題解決に活用している
  • データ連携基盤を通じて複数分野のサービスをつなぎ、産学官連携で地域課題に取り組んでいる
  • 農産物の需給マッチングなど、地域産業にかかわる分野でもデジタルサービスを実装している

5. 富山県富山市|古い町並みを活かした「食とクラフトの街」岩瀬地区の再生

ねんじり亭 酒蕎楽 くちいわ

地元の老舗蔵元が買い取り、リノベーションを施したお店。富山湾の新鮮な魚や、日本酒と蕎麦が楽しめる(撮影者:安井信介)

富山県富山市の岩瀬地区は、江戸時代から明治期にかけて北前船の港町として栄えた歴史ある地域です。一方で、少子化や過疎化の影響により、空き家の増加やにぎわいの衰退が課題となっていました。

そうしたなか、地元の老舗蔵元「桝田酒造店」が中心となり、2004年に岩瀬まちづくり株式会社を設立。古民家や蔵を買い取ってリノベーションし、クラフト作家の拠点や一流シェフの飲食店などを誘致する取り組みをスタートさせました。

現在は、飲食店やアートギャラリーなどが軒を連ね、全国から食やクラフトに関心を持つ人々が訪れるエリアへと変化しています。地元の老舗蔵元が起点となって岩瀬に合う担い手を呼び込み、一つひとつの魅力的な「点」をつなげてきたことが、岩瀬らしいにぎわいを育てています。

<富山県富山市のまちづくり成功のポイント>

  • 古い建物を解体せず、飲食店や作家の拠点として再生し、地域資源として活かしている
  • 地元の老舗蔵元が起点となり、食やクラフトなど地域の魅力と相性のよい担い手を呼び込んでいる
  • 個々の店舗や人の魅力をつなげ、まち全体の回遊や滞在のきっかけを生み出している

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6. 福岡県北九州市|遊休不動産を活用した「リノベーションまちづくり」

螺旋階段がある店舗の前にいる何人か人が立っている

北九州市小倉北区の魚町サンロード商店街にある、リノベーションまちづくりの先駆けとなった「メルカート三番街」(撮影:中村絵)

福岡県北九州市小倉では、郊外店舗の増加などにより中心市街地のにぎわいが失われていました。この課題を解決するため、市が主体となり、商店街関係者・学識経験者・行政関係者らによる検討委員会を設置。江戸時代の「家守(やもり)」(借家人の世話や地域の管理を担った差配人)にたとえた「小倉家守構想」を策定。民間主導で実施した取り組みが「リノベーションまちづくり」として広がりました*14。

その第一歩となったのが魚町地区の「メルカート三番街」です。空きビル1棟をまるごと借り受けて、中心市街地では少ない小規模物件を生みだすためにリノベーションを実施。家賃を周辺相場より抑えたことで、若手クリエイターや起業家などがチャレンジできる場となりました。また、入居者同士の交流を促すことで自分ごと化を図り、新たなコミュニティも創出しています。この取り組みは他地区にも広がり、北九州市ににぎわいをもたらしています*15。

さらに、まちづくりを志向する人が地域・職業を超えて参加できる実践型の「リノベーションスクール」を開講。官民学の境目なく、市民も一緒にディスカッションできるなど、新しいまちづくりのエンジンとして、新たなプロジェクトの創出や人材育成の場となっています。

一方行政は、建築物の用途変更や消防法の適用確認といった行政手続の相談窓口を一本化するとともに、広報PRや不動産オーナーへの啓発に力を入れています*16。

民間と行政で役割を分担し、遊休不動産を再生して都市型産業の集積を行うリノベーションまちづくりの手法は、現在国内外の116都市・地域(2025年3月時点*17)にまで広がっています。

<福岡県北九州市のまちづくり成功のポイント>

  • 遊休不動産を解体せず、リノベーションによって新たな事業の場として活用している
  • 民間事業者が主体となり、行政は手続きの一本化や広報PR、不動産オーナーへの啓発などの面から支援している
  • 家賃を低く抑えた小規模物件を生みだし、クリエイターや起業家などにチャレンジの場を提供している

7. 宮城県女川町|震災復興で実現したコンパクトなまちづくり「シーパルピア女川」

レンガ道の両側に店舗が並び、奥には海が見える

宮城県牡鹿郡女川町にあるJR女川駅前から女川湾へ向かってまっすぐ伸びる、シーパルピア女川(画像提供:女川みらい創造株式会社)

宮城県女川町は、東日本大震災で大きな津波被害を受けた地域です。復興にあたって特徴的だったのは、行政だけに頼るのではなく、商工業者や住民も加わって街の将来を議論する仕組みを、早い段階で立ち上げたことでした。

被災直後に発足した「女川町復興連絡協議会(FRK)」や、住民・事業者が参加するワーキンググループでの議論をもとに、高台への住宅移転と、かさ上げした中心部への都市機能集約を柱とする復興計画を立てました。この中心部の事業エリアを担ったのが、行政と民間が協同出資する女川みらい創造株式会社です。中心部に公共施設や商業施設、観光施設を集約することで、安全性と利便性を両立した「コンパクトなまちづくり」を進めました*18。

その中核として整備したのが、駅前から女川港へ真っ直ぐに続くプロムナード沿いの商業施設「シーパルピア女川」です。開業時には27店舗が入居し、うち14店舗は被災事業者による再建でした。

同社は、店舗の所有権を自社で持ちながら、利用(営業)は個別の事業者に委ねる「テナント制」を採用。空き区画が生じてもシャッターが下りたままにならないよう、積極的に次のテナントを誘致する仕組みをつくりました。現在は「道の駅おながわ」としても登録され、町内外の人が集う交流拠点になっています。

民間が主体となって立ち上げた議論の場と、公民連携によるスピード感のある事業執行が、被災地のなかでも早期の商業再生と、その後のにぎわいの継続につながったといえるでしょう*19。

<宮城県女川町のまちづくり成功のポイント>

  • 民間主導で早期に議論の場を立ち上げ、住民参加のワーキンググループで出た意見が復興計画に反映された
  • 第三セクターが商業施設を整備・運営し、被災事業者の再建と新規出店の場をつくっている
  • 「テナント制」で所有と利用を分離し、空き区画のシャッター化を防ぐ仕組みを構築

8. 香川県高松市|民間主導で中心市街地を再開発した「高松丸亀町商店街」

アーケードがあり、左右にお店が並ぶ商店街

香川県高松市の中心部に位置し、江戸時代初期から400年以上の歴史を持つ全長約470mの高松丸亀町商店街(画像提供:高松丸亀町商店街振興組合)

香川県高松市の「高松丸亀町商店街」は、全長約470メートルに及ぶ歴史ある中心商店街ですが、郊外型商業施設の進出などにより通行量や売上の減少に直面していました。この危機にいち早く立ち上がったのが、商店街振興組合青年部のメンバーたちです。将来の街の姿について議論を重ね、行政を巻き込みながら、商店街全体を7つの街区にわけて段階的に再開発を進める方針を固めていきました*20*21。

特徴は、全国初となる「土地の所有と利用の分離」という仕組みの導入です*22。地権者は土地を所有したまま貸し出し、商店街振興組合が設立した「高松丸亀町まちづくり株式会社」が建物を所有・運営することで、これまで難しかった大規模な施設建設が可能になりました。

また、施設全体のバランスを見ながら店舗を誘致できるテナントミックス*23制を取り入れ、商業施設に加えマンションや医療施設も併設されるなど、買い物だけでなく、暮らしや交流の機能を備えた中心市街地へと生まれ変わりました*24。

この仕組みの実現には地権者一人ひとりの合意が不可欠で、商店街全体で街並みのルールを共有するなど、「みんなの街を、街のみんなでつくる」を合言葉に住民自らが再開発の主体となっています。

*21 住民自らの運用を定めた「高松丸亀町タウンマネジメントプログラム」に沿い、高松市が「街並み誘導型」の地区計画を策定

*22 地権者が定期借地権で土地を貸し、まちづくり会社が建物を所有・運営する仕組み。土地買収などの初期コストを抑えながら再開発を可能にした

*23 テナントミックス:ショッピングセンターや駅ビルなどの商業施設で、集客力や売上を最大化するために、施設の目的に合わせて店舗の業種やブランドをバランスよく組み合わせ、配置すること

<香川県高松市のまちづくり成功のポイント>

  • 商店街全体を7つの街区に分け、段階的に再開発を進めている
  • 土地の所有と利用を分ける仕組みにより、地権者の合意形成と民間主導の運営を両立している
  • 商業、居住、医療、交流の機能を集約し、中心市街地に日常的な人の流れを生み出している

監修者コメント|まちづくりを成功させるためのポイントと注意点

饗庭 伸さん

饗庭

まちづくりはひとりでできるものではなく、他者とコミュニケーションをとりながら、時間をかけて取り組んでいくものです。そこには、ワークショップなどの「コミュニケーションのデザイン」、人間関係や組織をつくる「主体のデザイン」、行政や民間の資源との関係をつくりながらプロジェクトを前に進めていくという「プロセスのデザイン」の3つのデザイン領域があります。

また、長い時間をかけて取り組むまちづくりには「よいとき」と「悪いとき」がやってきます。よいときのやり方に固執せずに、柔軟に組織や方法を解いたり組み直したりするとよいでしょう。

成功事例から学ぶまちづくりの4つのアプローチ

地域の魅力・にぎわいを高める

地域の魅力やにぎわいを高めるには、大規模な再開発だけでなく、小さな場や仕掛けからはじめる「スモールスタート」も効果的です。岩手県雫石町の軽トラ市や、静岡県焼津市のシェア型図書館、長野県飯田市の人形劇フェスタのように、地域にある資源や文化を活かし、住民や来訪者が参加できる接点をつくることが大切です。

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データ・テクノロジーで地域課題を解決する

スマートシティをはじめとするデータやデジタル技術を活用する視点も、暮らしやすい街を考えるうえで重要です。福島県会津若松市のように、データを活用して複数分野の地域課題に向き合う自治体も増えています。

交通、行政サービス、防災、医療・福祉などの分野でデータやデジタル技術を活用することで、地域で暮らす人の不便や困りごとを可視化し、解決につなげることができます。技術の導入そのものを目的にせず、住民の幸福感や暮らしやすさを高める手段としてとらえることが重要です。

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持続可能な仕組みをつくる

まちづくりを一過性で終わらせないためには、ひとつの拠点や事業で完結させず、仕組みや人材、不動産活用などをつなぎながら、取り組みを「面」として広げていく視点が欠かせません。

たとえば、富山市岩瀬地区や福岡県北九州市のリノベーションまちづくりのように、民間の担い手が遊休不動産や古い建物を活かし、事業として継続させていく方法もあります。

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空き家活用の成功事例5選。専門家と読み解く地域再生のヒント

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暮らしやすいまちを実現する

暮らしやすいまちを実現するには、商業施設や公共施設を整えるだけでなく、住民が日常的に利用しやすい動線や機能を考えることが大切です。宮城県女川町のシーパルピア女川や香川県の高松丸亀町商店街のように、地域の実情に合わせて買い物や医療、交流などの機能を配置し、人が集いやすい環境づくりに取り組んでいる事例もあります。

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監修者コメント|まちづくりが地域にもたらす可能性と今後

饗庭 伸さん

饗庭

空間資源が余り、データや情報技術を安価に使えるようになったいまは、「変えられない」「変わりようがない」と思っていた自分の地域を大きく変えるチャンスです。一つひとつの取り組みは小さなものかもしれませんが、いろいろな人たちの同時多発的な取り組みが重なり合うことで、思いもよらない新しい地域の姿が現れてくるかもしれません。

一方で、自分たちの視野の「外側」にある問題にも気を配っておく必要があります。すべての問題を引き受ける必要はありませんが、ひとつの問題を集中的に解くだけでなく、もう1つ2つの別の問題を一緒に解くことで、よりよい地域が立ち現れてくるのではないでしょうか。

まちづくりを進めるうえでの課題と乗り越え方

まちづくりは地域の魅力や暮らしやすさを高める一方で、継続して進めるには課題もあります。特に重要なのが、財源の確保、担い手不足、関係者間の合意形成です。運営を続けるための資金や人材が不足したり、一部の人に負担が集中したりすると、活動の継続は難しくなります。

こうした課題を乗り越えるカギとなるのが、地域の課題や資源を共有し、住民、事業者、行政が対話できる場を構築することです。雫石町の軽トラ市のようなワークショップや、北九州市の小倉家守構想のような官民の役割分担は、関係者間のスムーズな合意形成や継続的な運営のヒントになります。補助金や制度も活用しながら、無理なく続く仕組みを整えることが、まちづくりを地域に根づかせるポイントです。

自分たちの地域に合ったまちづくりを考える

地域が抱える課題を解決し、暮らす人や訪れる人にとってよりよい環境をつくっていくことが、まちづくりの基本です。商店街のにぎわいづくり、空き家や遊休不動産の活用、文化イベント、スマートシティ、復興まちづくりなど、そのアプローチは地域によって異なります。

今回紹介した事例から見えてくるのは、行政や民間だけでなく、住民、事業者、地域団体、専門家などが役割を分担しながらかかわり、その地域に合った方法を育てていることです。地域にある資源や課題を見つめ直し、小さな一歩からでも自分たちに合ったやり方を見つけていくことが、持続可能なまちづくりへの確かな一歩になるでしょう。

*1 国土交通省「キッズコーナー」

*2 北陸地方整備局建政部「都市計画の概要」

*3 指宿市「市民と協働のまちづくり」

*4 官民連携まちづくりポータルサイト「官民連携まちづくりとは」

*5 国土交通省「地方都市のまちづくり」

*6 国土交通省都市局まちづくり推進課「地方都市のまちづくり

-地域経済の活性化とまちなかの再生-」

*7 国土交通省「遊休不動産再生を活用したエリア価値向上手法に関するガイドライン」

*8 内閣府「特集 いまこそ災害に強いまちづくりを」

*9 雫石商工会「軽トラ市」

*10 雫石町役場「笑顔と元気を乗せて走り続ける「元祖!しずくいし軽トラ市」」

*11 会津若松市「「スマートシティ会津若松」について」

*12 会津若松市「「スマートシティ会津若松」の推進体制」

*13 あいづわかまつ市政だより別冊「【特集】「スマートシティ会津若松」が目指すこれからの会津若松のカタチ」

*14 北九州市「リノベーションまちづくりの推進」

*15 清水義次「リノベーションまちづくり」

*16 北九州市「RENOVATION MAP」

*17 リノベリング「リノベリングとは」

*18 公益財団法人 日本交通公社「特集4-1 女川町「民間主導の公民連携」による復幸まちづくり 寺崎竜雄」

*19 復興庁 東日本大震災の教訓継承サイト「復興の教訓・ノウハウ集」

*20 高松市「高松丸亀町商店街地区地区計画の概要」

*24 高松丸亀町商店街「再開発について」

この記事の内容は2026年11月4日掲載時のものです。

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Credits

執筆
佐々木ののか
編集
篠崎奈津子(CINRA, Inc.)

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