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町おこし成功例14選から読み解く!持続可能な地域づくりのポイント
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人口減少や高齢化、産業の衰退といった課題を抱えるいま、地域の魅力を再発見し、新たな活力を生み出す「町おこし」の取り組みが各地で進められています。
自治体だけでなく、地域住民や地元企業、外部パートナーが連携しながら、持続可能な地域づくりをめざす動きが広がるなかで、実際に成果を上げている事例も数多くあります。
今回は、全国14地域における町おこしの取り組み事例と、成果があがった要因を紹介。さらにこれらの成功例から見えてくる、町おこしを推進するにあたってのポイントも解説します。
Index
- 町おこしとは?地域振興における重要な役割を紹介
- 町おこしが必要とされるのはなぜ?
- 町おこし成功例14選の一覧表
- 【観光】町おこし成功例と成功要因
- 1.青森県田舎館村|田んぼアートで観光促進
- 2.長野県阿智村|「日本一の星空」をアピールし観光促進
- 3.埼玉県鷲宮町|人気アニメ『らき☆すた』の聖地巡礼
- 4.埼玉県小鹿野町|全国からバイクライダーが訪れる「聖地」
- 5.岩手県遠野市|町に伝わる民話が舞台やバレエにも進化
- 【就業・移住】町おこし成功例と成功要因
- 6.徳島県神山町|サテライトオフィスで人材や企業を呼び込む
- 7.島根県海士町|大人の島留学で就業・移住体験
- 8.広島県尾道市|空き家再生プロジェクトで移住促進
- 【教育】町おこし成功例と成功要因
- 9.北海道厚沢部町|保育園留学で新しいかたちの教育を提供
- 【農業】町おこし成功例と成功要因
- 10.徳島県上勝町|町おこしの先駆け事例となった「葉っぱビジネス」
- 11.高知県馬路村|地元の農産物・ゆずで村の収益増加
- 12.茨城県行方市|廃校を年間10万人以上が訪れる農業体験型テーマパークに
- 【まちづくり】町おこし成功例と成功要因
- 13.島根県出雲市|アプリを活用したデジタル町おこし
- 14.富山県富山市岩瀬|古い町並みを活かして「食とクラフトの街」に
- 町おこしを成功させるために必要なポイントとは?
- いまある地域資源や特産品を活かす
- 地域住民に協力・参加してもらう
- 持続可能な取り組みにする
- まとめ|町おこしの未来を考える
町おこしとは?地域振興における重要な役割を紹介
町おこしとは、地域の経済・社会・文化活動を活発化し、その地域の持続的な発展をめざす取り組みです。
地域の課題を解決し、持続可能な発展を実現するために、町おこしにはさまざまな方法が存在します。町おこしの主な方法として、以下のようなものが挙げられます。
- 観光客を増やす
- 移住・定住を促進する
- 独自の産業を確立し経済を活性化させる
- 地域における雇用や仕事を創出する
- コミュニティを構築し交流を生み出す
- 地域住民の活動意欲を高める
こうした取り組みは全国各地で展開されており、地域ならではの特色を活かした町おこしが成功しているケースも数多く見られます。
また、行政や地域団体においては、より広範な地域での取り組みを指す言葉として、「町おこし」ではなく「地域おこし」という表現も広く使われています。
町おこしが必要とされるのはなぜ?
町おこしが必要とされる背景には、都市部への人口集中による「地域人口の減少、過疎化」という課題があります。
日本では高度経済成長期(1955年頃〜1973年頃)以降、進学や就職に伴って地方から都市部へ多くの人が転出し、主に東京への人口の一極集中が起きています。
これによって地方では地域人口の減少、過疎化が進み、働き手の不足による地域産業・経済の衰退や税収の減少、生活・行政サービスの縮小や質の低下といったさまざまな課題が生じているのです。
現在、人口減少や少子高齢化が加速するなか、こうした課題がさらに深刻化し、地方の疲弊が進んでしまっているといえます。これらの課題を解消し各地域の持続可能性を高めるために、町おこしや地方創生が重要視されているのです。
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町おこし成功例14選の一覧表
ここからは全国各地の14地域において実施され、近年、評価の定着している町おこしの成功例について、概要・成果と成功要因を紹介します。
「観光 / 就業 ・移住 / 教育 / 農業 / まちづくり」の5つのカテゴリに分けて、見ていきましょう。
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| カテゴリ | 地域 | 概要と成果 |
|---|---|---|
| 観光 | 青森県田舎館村 | 観光資源として「田んぼアート」を確立し、年間35万人以上の集客と約2,100万円に及ぶ展望料収入を実現。 |
| 長野県阿智村 | 「日本一の星空」を観光資源として確立、ブランド化し観光客増加を実現。ツアー来場者は延べ120万人以上に及ぶ。 | |
| 埼玉県鷲宮町 | 地元 鷲宮神社が舞台となった人気アニメをテーマに、グッズ製作やイベントを実施。経済効果は1億円超に及ぶ。 | |
| 埼玉県小鹿野町 | 15年以上にわたって「バイクによる町おこし」を継続。全国からライダーが訪れる「聖地」として認知されている。 | |
| 岩手県遠野市 | 河童・座敷わらしの民話文化を観光資源として確立。16人の語り部が継承活動を続け、「民話の里」として観光客を集めている。 | |
| 就業・移住 | 徳島県神山町 | サテライトオフィスの開設・運営支援や移住者の生活支援により、16社の移転と27名の雇用、約170名の移住が実現。 |
| 島根県海士町 | 就労型お試し移住制度「大人の島留学」を実施し、全国各地の若者とともにまちづくりを推進。参画者は約500名に及ぶ。 | |
| 広島県尾道市 | 空き家の再生と移住希望者への手厚い支援、観光・交流の充実により、移住相談数増加を実現。 | |
| 教育 | 北海道厚沢部町 | 地域での暮らしと保育園での生活を短期間体験できる「保育園留学」を実施。 |
| 農業 | 徳島県上勝町 | 豊富な地域資源「葉っぱ」を活かして新たな基幹産業を確立し、地元の高齢者や女性が活躍できる仕事の創出を実現。 |
| 高知県馬路村 | 古くからある地域資源「ゆず」を活かした6次産業化の取り組みにより、主要産業の確立と観光・交流の促進を実現。 | |
| 茨城県行方市 | 廃校をサツマイモ体験型テーマパークとして再生。年間10万人以上が訪れる農業体験施設に成長した。 | |
| まちづくり | 島根県出雲市 | コミュニケーションアプリを活用した移住相談や情報発信、コミュニティ構築を実施。 |
| 富山県富山市 | 昔ながらの町並みの港町を「食とクラフトの街」へリノベーション。『ミシュランガイド』掲載店も複数誕生した。 |
【観光】町おこし成功例と成功要因
1.青森県田舎館村|田んぼアートで観光促進
青森県田舎館村の田んぼアート
青森県中央部、津軽平野に位置する田舎館村(いなかだてむら)で、基幹産業である「稲作」を活かして観光資源を確立し、地域への新たな人の流れをつくり出した事例です。
田舎館村では、1993年より村おこし事業として、稲を用いて田んぼに絵や文字を描く取り組みをはじめました。当初は3色の稲で毎年同じシンプルな図柄と文字を描いていて、本取り組みは「稲文字」と呼ばれていました。やがて用いる稲は7色12品種に、絵柄もより繊細でバラエティ豊かなものへと変化し、「田んぼアート」として定着しました。
この田んぼアートが大きな話題となり、田舎館村では最盛期に年間35万人以上に及ぶ集客を実現(*1)。2024年度には、展望料収入は約2,157万円に及んでいます(*2)。
〈町おこしの成功要因〉
- 地域資源を活かして芸術性の高い観光資源をつくり上げたこと
- 単に稲でアートをつくるだけでなく田植えや稲刈りを体験できるイベントも実施するなど、地域住民や地元大学の学生との交流・連携を図りながら取り組みを推進したこと
2.長野県阿智村|「日本一の星空」をアピールし観光促進
阿智村の星空(画像提供:阿智☆昼神観光局)
長野県の南端に位置する阿智村(あちむら)で、環境省により『星が最も輝いて見える場所』第1位に認定されたこともある美しい「星空」を観光資源として確立・ブランド化し、地域への新たな人の流れをつくり出した事例です。
阿智村では、2012年より『天空の楽園 日本一の星空 ナイトツアー』を開始。満点の星にくわえ、山頂までのぼるゴンドラの改装や宇宙服を着たツアーガイドによる案内など、来場者に楽しんでもらうためのさまざまな工夫を行ってきました。
開始初年度に約6,500名だった来場者は年々増加し、2025年3月末までで、イベント累計来場者数は120万人以上に(*3)。また、村の主要観光地・昼神温泉郷の宿泊客は、当初そのほとんどを占めていたシニア層だけでなく、20〜40代も多く見られるようになるなど、新規マーケットの開拓にも成功しています。
〈町おこしの成功要因〉
- 地域の自然資源を活かしてブランド化を行ったこと
- さまざまな企業と連携して共同プロモーションを行い、SNSでの発信を強化したこと
- 地域住民に向けた情報発信にも注力し、村民が観光交流の意義を理解し、地元に誇りが持てる状態も醸成できたこと
3.埼玉県鷲宮町|人気アニメ『らき☆すた』の聖地巡礼
毎年7月に開催される鷲宮の夏の例祭「八坂祭」で渡御される「らき☆すた神輿」(画像提供:久喜市商工会鷲宮支所)
埼玉県北東部に位置する鷲宮町(わしみやまち:現 久喜市)において、町にある鷲宮神社が舞台となった人気アニメにまつわる取り組みにより、地域への人の流れの創出、増加を実現した事例です。
女子高生たちの日常を描いた人気アニメ『らき☆すた』は、2007年よりテレビ放映がはじまりました。すると、登場人物の実家のモデルである鷲宮神社を、ファンが「聖地巡礼」で訪れるようになり、鷲宮町ではキャラクターと地場産業の魅力をかけ合わせたグッズの製作、イベントの開催、特別住民票の交付などを実施しました。
2007年12月のイベントには約3,500名が来場し、翌2008年の初詣には約30万人(前年比17万人増)の参拝客が訪れるなど、観光の促進が実現。これら一連の取り組みにより、1億円を超える経済効果が生まれています。
また、アニメ放送終了から15年以上が経つ2026年時点でも、定期的なイベントの開催とファンとの交流は続いています。(*4)
〈町おこしの成功要因〉
- 地場産業と人気アニメを関連づけたグッズ製作や、地元商店に限定したグッズ販売など、地域資源の活用と地域振興を重視した取り組みを実施したこと
- ファンの一部がボランティアとしてイベントの運営に携わるなど、地域住民や地元商店との連携・交流を生み出したこと
- 収益の一部を用いて街路灯を設置するなど、取り組みの成果を地域住民に還元したこと
4.埼玉県小鹿野町|全国からバイクライダーが訪れる「聖地」
小鹿野町をツーリングするバイクYouTuberのこつぶさん(撮影:伊藤圭)
埼玉県の北西部に位置する小鹿野町(おがのまち)において、バイクのライダーを積極的に呼び込むことで地域の活性化につなげた事例です。
名物「わらじカツ丼」を食べたライダーがその体験をインターネットに投稿したことをきっかけに、ライダーたちが徐々に集まるようになりました。それを受けて、2007年に全国自治体でもはじめての試みとして、「オートバイによる町おこし事業」を立ち上げ。2010年には、民間町民による任意団体「ウェルカムライダーズおがの」を設立しました。
ウェルカムライダーズおがのは、町としてライダーを歓迎していることを発信するために、専用駐車場の設置など小さな活動から開始。全国からライダーを誘致するイベント『おがのライダー宿』の開催や、地元警察と連携したライダー向けの交通安全啓発活動、町内マップの作成など、ライダーと地元町民が安心して共存できる環境づくりを進めました。
2023年のイベント『おがのライダー宿Vol.14』では町の人口に対して約15%に相当する1,600人の来場者が集まるなどライダーの聖地として定着。こうしたイベントや交流が15年以上続いています。
<町おこしの成功要因>
- 小規模でも定期的なイベント開催や情報発信を続けてきたこと
- バイクに対するマイナスイメージを、地元警察との連携やライダー・住民双方への情報発信で払拭したこと
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5.岩手県遠野市|町に伝わる民話が舞台やバレエにも進化
遠野市の様子(撮影:三輪卓護)
岩手県の中央部、北上高地の中央に位置する遠野市(とおのし)が、民話の語りを継承することで地域の価値を維持・向上させている事例です。
遠野市はもともと、柳田國男の『遠野物語』で知られ、河童や座敷わらしなどの民話が数多く伝わっています。「遠野昔話語り部の会」は、地元観光地や宿泊施設で観光客や地元住民に向けた語りを実施。語り部によって十人十色の語り口を聞くことができます。また、文献の暗記ではなく「聞くこと」によって語り継ぐ文化が継承されています。
語り部は一時期減少傾向に陥り、その高齢化も懸念されましたが、新規の語り部募集を行うと岩手県内から40人以上の応募が集まり、後継者の確保に成功。遠野の外からの人材流入にもつながりました。
近年ではオカルトブームに紐づいて、SNSで注目を浴びることも。こうした関心の高まりをとらえて、市民を中心として演じる『遠野物語』の舞台では、もとの物語をベースにバレエが披露されるなど、表現方法も多様化しています。時代に合わせたカスタマイズや工夫が、成功要因のひとつといえるでしょう。
<町おこしの成功要因>
- 民話の語りを継承する「語り部」の担い手を公募・育成することで文化の継続性を確保したこと
- 伝統的な物語に新たな要素を加えるなどの時代に合った工夫をしたこと
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【就業・移住】町おこし成功例と成功要因
6.徳島県神山町|サテライトオフィスで人材や企業を呼び込む
サテライトオフィス「えんがわオフィス」の内観(画像提供:大南信也さん)
徳島県中央部、一級河川 鮎喰川の上流に位置する神山町(かみやまちょう)で、サテライトオフィス(本拠点から離れた場所に設置するオフィス)の誘致によって、移住者の増加や地域における雇用の創出に成功した事例です。
神山町では1999年より、アーティストをはじめとした多様な職種の人々に町を訪れてもらうことを目的とした取り組みをスタート。その過程で次第にIターン需要が高まる中、あるスタートアップ企業が神山町に新たな拠点を設けたことをきっかけに、多くのIT関連企業がサテライトオフィスを神山町に置くようになりました。
2016年9月時点で16社の移転と27名の雇用が実現し、移住者は170名※にのぼります(*5)。2023年4月には、人材育成を目的に、デザインやテクノロジー、起業家精神を学ぶ高等教育機関「神山まるごと高専」も開校。同年の出生や死亡以外の要因による人口の動き(社会動態)においては、転出よりも転入数が上回る結果になっています(*6)。
(※サテライトオフィスプロジェクトに関連する移住者に限った数字ではありません)
〈町おこしの成功要因〉
- 町のNPO法人と県や町の連携により、高速インターネット環境の整備やオフィス開設・運用費用の補助、移住する社員の生活支援など、サポート体制を充実させたこと
- 進出企業と町内企業や地域住民との交流を促進し、進出企業が集落活動やまちづくりに貢献できる仕組みをつくったこと
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7.島根県海士町|大人の島留学で就業・移住体験
海士町の木路ヶ崎
島根県の北に浮かぶ隠岐諸島 島前(どうぜん)の海士町(あまちょう)において、就労型お試し移住制度の導入により、新たな人の流れや雇用の創出に成功した事例です。
海士町では2020年より、全国各地の若者(20〜29歳程度)が島で暮らし、働くことができる制度「大人の島留学」を始めました。参画者は3か月〜1年間にわたって島で生活し、島の仕事に携わり、地域住民と交流します。
海士町から始まった本取り組みは、同じく島前の西ノ島町(にしのしまちょう)・知夫村(ちぶむら)にも広がり、年間約200名ほどが参画しています(*7)。
〈町おこしの成功要因〉
- 来島時のスタートアップ研修、滞在中のフォローアップ研修など、島で暮らし地域の住民と交流するためのサポートを充実させたこと
- 参画者に「当事者」として島のまちづくり・町おこしに携わることを促し、ともに島が抱える課題の解決に取り組んでいること
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8.広島県尾道市|空き家再生プロジェクトで移住促進
尾道市の様子(画像提供:尾道空き家再生プロジェクト)
広島県東部に位置する港町 尾道市(おのみちし)において、空き家の再生を軸とした取り組みを通じて、移住・定住者の増加を実現した事例です。
尾道市では2002年度より空き家バンクの運営を行い、さらに2009年からは「NPO法人 尾道空き家再生プロジェクト」との連携によって、情報発信や空き家の再生・有効活用に取り組んできました。
同NPO法人が主体となった現在の取り組みは、家主と移住希望者のマッチングから、定住に至るまでの移住支援、空き家を活かしたコミュニティづくりや交流の促進まで多岐にわたります。
プロジェクトを通じて再生された空き家は100件を超え、2023年時点で登録された空き家は160軒に(*8)。県内外からの移住相談数も年々増加しています。
〈町おこしの成功要因〉
- 空き家の再生だけでなく、セルフリノベーションや暮らしにまつわるアドバイスなど、充実した移住・定住支援で移住希望者を後押ししていること
- サイクルツーリズムをはじめ「観光交流の拡大」にも注力し、観光から移住への流れの創出を試みたこと
- 古民家を再生したゲストハウスを観光や地域住民との交流の拠点として運営し、収益をプロジェクトの資金源とすることで、持続可能な活動を実現していること
【教育】町おこし成功例と成功要因
9.北海道厚沢部町|保育園留学で新しいかたちの教育を提供
北海道厚沢部町の認定こども園「はぜる」の園舎(画像提供:株式会社キッチハイク)
北海道 渡島半島の日本海側に位置する厚沢部町(あっさぶちょう)において、企業が主体となった「保育園留学」プログラムを通じ、地域への人の流れの創出と移住の促進が実現した事例です。
保育園留学とは、子どもを通わせたい保育園がある地域での暮らしを1~2週間体験できるプログラムです。株式会社キッチハイクが、厚沢部町で2021年より保育園留学事業をスタート。参加する家族に対し、子どもを短期間預かる「一時預かり制度」のほか、移住体験住宅、農作業をはじめとした町での生活体験をパッケージとして提供しています。
事業開始以来、多くの問い合わせと申し込みが寄せられ、留学先は60地域以上に拡大。2025年11月時点で累計3,000家族・約10,000人が保育園留学を体験しました。リピート希望率は99%にのぼります(*9)。
〈町おこしの成功要因〉
- テレワークが行えるよう移住体験住宅のネットワーク環境を整えたり、慣れない土地での医療との接続をサポートするオンライン診療サービスを導入したりと、滞在中の支援を充実させたこと
- 旅先で寄付が行える「旅先納税®️※」の仕組みを導入し、寄付金収入を得るとともに電子クーポン(返礼品)による地域での消費促進を行うことで、継続的に事業を運営できる基盤をつくったこと
(※「旅先納税®️」は、株式会社ギフティの登録商標)
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【農業】町おこし成功例と成功要因
10.徳島県上勝町|町おこしの先駆け事例となった「葉っぱビジネス」
彩ブランドのつまもの(画像提供:株式会社いろどり)
収穫農家の方が出荷準備をしている様子(画像提供:株式会社いろどり)
徳島県の中央部、勝浦川沿いに位置する上勝町(かみかつちょう)において、地域資源である「葉っぱ」を活かし、新たな地域産業の確立と仕事・雇用の創出に成功した事例です。
上勝町では、寒波の影響で町の主要産業が打撃を受けたことをきっかけに、1986年より町の山々にある葉っぱを「つまもの(刺身などの日本料理を彩るつけ合わせ)」として販売する事業をスタートしました。
営農戦略や栽培管理は農家が、受注や精算、流通は農協が、そして市場分析や営業活動、システム運営は地元企業 いろどりが担う、三者の連携によって事業が運営されました。
本ブランド「彩(いろどり)」の年商は、2024年度には約2億6,000万円に(*10)。葉っぱビジネスには、町の高齢者や女性が多く活躍し、農業体験希望者や移住希望者も増加しました。また視察などによって交流人口が増えることによる経済効果も大きなものとなっています。
〈町おこしの成功要因〉
- 地域資源である葉っぱを活かし、町民の半数近くを占める高齢者や女性の活躍の場を創出したこと
- 事業継続に向け、農業体験や長期研修など後継者の育成や就農のサポートにも取り組んでいること
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11.高知県馬路村|地元の農産物・ゆずで村の収益増加
30年を超えるロングセラー商品となったドリンク「ごっくん馬路村」(画像提供:馬路村農協)
高知県馬路村のゆず収穫トラックの様子(画像提供:馬路村農協)
高知県安芸郡の馬路村(うまじむら)において、地元のゆずを活かした「6次産業化」によって、新たな主要産業の確立とファンの増加、さらには地域への人の流れの創出を実現した事例です。
馬路村では1960年前後にゆずの栽培を開始し、1979年に発売された佃煮を皮切りにゆずの加工事業を展開。ぽん酢しょうゆ「ゆずの村」や、はちみつ入りゆず飲料「ごっくん馬路村」が、西武百貨店『日本の101村展』でそれぞれ最優秀賞、農林部門賞を受賞。そこから広く知られるようになり、全国に馬路村の商品のファンを増やしてきました。
ゆず関連商品にまつわる年商は、約30億円規模におよびます(*11)。またゆず収穫の安全を祈願するお祭り『ゆずはじまる祭』に5,000名もの観光客が訪れたり、村での暮らしを体験できる『馬路村ワーキングホリデー』に村外の若者が参加したりと、観光や交流の促進にもつながっています。(*12)
〈町おこしの成功要因〉
- 古くからの地域資源であるゆずを活かしてさまざまな商品を生み出し、馬路村の商品であることを前面に押し出したPRを行ったこと
- 農協と村役場、地域住民の連携によって村全体で取り組みを推進したこと
12.茨城県行方市|廃校を年間10万人以上が訪れる農業体験型テーマパークに
「らぽっぽなめがたファーマーズヴィレッジ」の外観。廃校になった小学校が活用されている(画像提供:らぽっぽなめがたしろはとファーム)
茨城県南東部に位置する行方市(なめがたし)で、廃校になった小学校の跡地を活用して農業体験型テーマパークをつくった事例です。
行方市はもともとサツマイモの一大産地。そこで、サツマイモを使ったスイーツを出すお店を運営する民間企業と協力し、生産から販売までを担う6次産業化をめざす計画が立ち上がります。その際、地元から企業側に対して、廃校になった小学校を活用する提案がなされ、2015年に完成したのが「らぽっぽなめがたファーマーズヴィレッジ」です。
活用された廃校は100年以上の歴史があり、地元住民からの思い入れが強い場所。建物や遊具など、使えるものをそのまま使い続けることで廃校を「再生と挑戦のシンボル」として継承しました。地域内外から注目を集め、年間10万人以上が訪問する人気施設に。サツマイモの苗植えから収穫までを体験できる制度「農業オーナー制度」も支持されています。
<町おこしの成功要因>
- 地域の特産品サツマイモを、廃校と組み合わせて活用したこと
- 「農業オーナー制度」など、単なる収穫体験ではなく農業のプロセスを体験できるよう設計したこと
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【まちづくり】町おこし成功例と成功要因
13.島根県出雲市|アプリを活用したデジタル町おこし
観光情報についてオープンチャット内で人々の声を募集するイメージ(画像提供:出雲市)
島根県中東部に位置する出雲市(いずもし)における、コミュニケーションアプリを活用した移住支援や観光・交流促進の事例です。
出雲市では2023年より、アプリを活用した移住相談の運用をスタート。友だち登録を行ったユーザーは、助成金をはじめ移住にまつわる相談ができるほか、移住相談会や移住体験ツアーなど市が実施する取り組みについての情報も受け取れるようになりました。
現在は、移住を考える方に限らず多くの人々に出雲市の魅力を伝えるべく、新たに出雲市観光・移住公式アカウント「出雲ファンクラブ」として情報発信が行われるほか、アプリの「オープンチャット」でのコミュニティ構築も進められています。
このように、近年はSNSの活用に加え、行政や地域社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する動きが活発化しており、町おこしの手法も大きく進化しています。
今後は、地域の特性に合わせたデジタル活用によって、より効果的かつ持続可能な町おこしが進んでいくと考えられます。
14.富山県富山市岩瀬|古い町並みを活かして「食とクラフトの街」に
岩瀬の町並み(撮影:安井信介)
富山市の岩瀬で、古い建物を活かした風情ある町を、飲食店やアートギャラリーなど、多彩な感性や志を持つ人々が集まる場に変化させた事例です。
岩瀬は、江戸時代から明治時代にかけて寄港地として栄えた町。時代の移り変わりのなかで人口減が進み、一時期は閑散とした風景が広がっていましたが、2004年に設立された岩瀬まちづくり株式会社が古い街並みを活かしながら街のリノベーションを実施しました。そこへ飲食店やアートギャラリーなどを誘致し、多彩な感性や志を持つ人々が集まる場に。
昔ながらの町並みを保存するだけでなく、「食とクラフトの街」として発展させる取り組みが注目を集めています。
<町おこしの成功要因>
- 地元企業がリーダーシップをとり、実力派飲食店の誘致に成功したこと
- 厳しい景観ルールで縛るのではなく、昔ながらの町並みを活かしつつ、文化を重視した独自のまちづくりを行ったこと
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町おこしを成功させるために必要なポイントとは?
各地域における町おこしの成功例をふまえ、町おこしを成功させるために必要なポイントとして以下の3つが挙げられます。
- いまある地域資源や特産品を活かす
- 地域住民に協力・参加してもらう
- 持続可能な取り組みにする
いまある地域資源や特産品を活かす
特産品のゆずを活かして多様な商品を生み出した高知県馬路村の取り組みや、村から見られる星空を観光資源として確立した長野県阿智村の成功例のように、地域にすでにある資源や特産品を活かすことがポイントのひとつです。
地域資源を活用することは、町おこしの取り組みに「その地域ならでは」の個性や魅力、「その地でなければ体験できない」という価値を与えます。
こうした地域の特性をアピールすることが、地域外の人が観光で訪れたり移住を希望したりする動機や後押しになるほか、地域住民が地元に誇りを持ち、活動意欲を高める助けにもなるでしょう。
地域住民に協力・参加してもらう
町おこしの取り組みを進めるにあたっては地域資源活用のアイデアや人手が必要で、国や自治体だけでできることには限りがあります。
そのため、村民が一丸となってつくり上げた青森県田舎館村の「田んぼアート」や、地元商店街全体でイベントを盛り上げた埼玉県鷲宮町の成功例のように、地域の人々を巻き込んでともに取り組みを推進することが重要です。
また、地域を訪れた観光客や移住希望者にとっては、住民と交流し、住民の地元に対する誇りや町おこしへの積極的な姿勢に触れることが、移住後の暮らしへの安心感になり得ます。
持続可能な取り組みにする
町おこしの成果を挙げるためには、長期的に取り組みを続けていくこと、そのために取り組みを持続可能なかたちにすることが欠かせません。
寄付の仕組みを導入した北海道厚沢部町の「保育園留学」や、再生した古民家を交流拠点として運営し資金源とする広島県尾道市の「空き家再生プロジェクト」のように、事業を続けるための基盤を確立することは重要なポイントです。
また高齢化や過疎化が進む中では、資金面だけでなく、後継者の育成や新規就農の支援に注力する徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」のように「担い手」の観点でも、事業継続を考える必要があります。
【監修者コメント】町おこしを成功させるには?

米田
14事例を見てきましたが、町おこし(地域おこし)成功のポイントは何でしょうか。
それは、まず課題に正面から向き合う当事者意識、そして課題解決を乗り越えて各地域で創造される新しい価値だと思います。町おこし(地域おこし)は現状の課題認識から始まりますが、それらやめざすべき目標を仲間と共有できているでしょうか。また行政任せにせず、他人事でなく自分事として取り組んできたでしょうか。
そしてもうひとつ今の時代に大切なことは、町おこし(地域おこし)を地元住民だけで考えないということです。観光、滞在、交流等を切り口に外部の応援団と一緒に考え行動する、これがこれからの町おこし(地域おこし)に必要な枠組みだと思います。
まとめ|町おこしの未来を考える
地域における経済・社会・文化的な活動を活発化し、その地域の持続的な発展をめざす「町おこし」。少子高齢化の進行や人口減少がさらに見込まれる日本において、今後も町おこしの重要性は増していくものと考えられます。
今後の町おこしにおいては、行政だけに頼らずに地域住民が主体となって取り組みを進めることも重要です。そのため、今後は町おこしにおいて民間のアイデアや動きと政策・制度をつなぐ中間組織が機能していくことが、求められるようになっていくのではないでしょうか。
*1:政府広報オンライン「田んぼアート | November 2020 | Highlighting Japan」
*3:株式会社阿智昼神観光局「願いが叶う「日本一の星空 阿智村七夕まつり 2026」開催」
*4:全国町村会HP「埼玉県鷲宮町/アニメを活かした町おこし~地元とファンの交流を成功に導いたものとは~」
外務省HP「ゼロからレジェンドへ。アニメ聖地巡礼で地域振興の先駆者「久喜市鷲宮」と「らき☆すた」の取り組み」
*5:内閣府地方創生推進事務局「稼げるまちづくり取組事例集『地域のチャレンジ100』」p.24
*6:神山町「人口と世帯数」
*7:海士町公式サイト「大人の島留学」
*8:朝日新聞「現代的な便利さを追うよりも…空き家を次々と宿泊施設に再生 尾道」
*9:PR TIMES 「島根県江津市で2拠点目の「保育園留学」スタート。留学先納税・企業版ふるさと納税を活用し、持続的なまちづくりへ」
*10:株式会社いろどりHP「会社概要・アクセス」
*11:自治体通信ONLINE「❝地元愛❞が成功の秘訣 ゆずの村おこし、年商30億円」
*12:馬路村HP「https://vill.umaji.lg.jp/about/history/村の歴史」
この記事の内容は2025年6月24日掲載時のものです。(2026年8月7日 一部更新)
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Credits
- 執筆
- 永田遥奈
- 編集
- 牧之瀬裕加(CINRA,Inc.)