全国47都道府県のなかからひとつの地域を取り上げ、ゆかりのある方にその地域の魅力を聞く「47 Local Stories」。
第6回は「青森県」。今回は青森県出身の3名——声優の三上枝織さん、シンガー・俳優のジョナゴールドさん、漫画家の石塚千尋さんがアンケートに答えてくれました。青森で過ごした時間のなかで刻まれた記憶や、何気ない日常のなかで生まれたインスピレーションとは? 観光情報サイトやSNSだけでは見えてこない、実体験をとおして見える青森県のリアルを教えてもらいます。
三上枝織[声優:青森県出身]
三上枝織さん
声優。『ゆるゆり』赤座あかり、『進撃の巨人』クリスタ・レンズなど、少女役から大人の女性役まで幅広く演じる。青森市観光大使も務める
―地元で好きな場所はどこですか?
津軽平野と、そこから見える岩木山です。青森に帰るたび、この景色を見ると「帰ってきたな」と実感します。広大な自然を眺めていると、声優をめざそうと決めた頃の気持ちを思い出し、初心に帰ることができる特別な場所です。
三上さんいわく「緑に癒され、ほっと一息つけます」という、津軽平野と岩木山の風景(画像提供:三上枝織さん)
もうひとつは、青森市にある青森県観光物産館「アスパム」周辺です。地元にいた頃は一番都会だと感じていた景色で、幼い私にはとてもキラキラと映っていました。アスパムの裏側にある、海を見渡せるベンチで、景色を眺めながらぼーっと過ごす時間が心地よくて大好きです。
三上さんが「アスパムの三角の形がすごく好きです」と語る、青森県観光物産館アスパムの周辺(画像提供:三上枝織さん)
―青森の言葉や人とのかかわり方、暮らしのリズムなどが、ご自身の声や演技、話し方に影響していると感じる場面はありますか?
地元では津軽弁で話していましたが、声優をめざした当初は、標準語を身につけるためにあえて封印していました。でも、自分にしかできない表現は何だろうと考えたとき、青森や津軽弁はずっと自分の一部だったのだと、あらためて気づきました。津軽弁を発信するようになってからは、青森に関する作品や津軽弁を話す役を担当する機会も増え、自分らしさが仕事につながっていると感じています。
―上京して青森を離れたことや、青森市観光大使として地元を紹介する立場になったことを通じて、あらためて気づいた青森の魅力はありますか?
青森を離れたことで、当たり前だと思っていた景色や方言、人の温かさ、海鮮のおいしさが、青森ならではの魅力だったのだとあらためて気づきました。『初耳@AOMORI』(RAB青森放送)などの青森の番組に出演し、地元を紹介するようになってからは、その魅力をもっと多くの方に知ってもらいたいという想いが、より強くなりました。
これからの夢は、青森を舞台にした作品の朗読劇を企画することです。開催地は、もちろん青森で! いつ叶うかはわかりませんが、その夢を実現できるように、青森のお仕事も声優のお仕事も全力で頑張ります!
青森市観光イメージキャラクター「ねぶたん」と三上さん。青森市文化観光交流施設「ねぶたの家 ワ・ラッセ」にて(画像提供:三上枝織さん)

三上
ねぶたはぜひ生で見てほしいです!
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ジョナゴールド[シンガー・俳優:青森県出身・弘前市在住]
ジョナゴールドさん
シンガー・俳優。地元アイドル「りんご娘」の一員として活動後、2022年よりソロで活動。青森発のポップシンガーとして、地域の魅力を歌で発信し続けている
―地元で好きな場所はどこですか?
弘前市りんご公園のすり鉢山から見える岩木山です。いまの事務所に入り、はじめてパフォーマンスしたのがりんご公園のステージでした。それ以降も毎年のようにライブで足を運び、全国のご当地アイドルのコンテストで優勝したときには、ここから見える岩木山にメンバーと優勝報告をしに行きました。
いまでは、事務所主催の音楽フェスを開催する会場にもなり、私の人生において欠かせない、たくさんの出会いや思い出が詰まった場所になりました。
弘前市りんご公園で開催される音楽フェス「RINGO MUSIC FES.」。岩木山を望むロケーションも魅力(画像提供:RINGO MUSIC)
―青森で暮らし、活動するなかで、音楽やパフォーマンスに自然とにじみ出ていると感じるものはありますか?
どこでライブをしたとしても、青森という帰る場所があることは、大きな支えになっていると感じています。
音楽活動のさまざまな場面でも、青森の存在は大きいです。制作の過程でインスピレーションを受けるのは青森ですし、ライブのMCでも、特に取り繕うことなく、ずっと方言で話しています。青森は自分のなかににじみ出ているどころか、これからもずっと真ん中にあり続けるものだと思っています。
―音楽やエンターテインメントを通じて青森の魅力を発信し続けていらっしゃいますが、その活動に込めている想いを教えてください。また、これから青森で何かをはじめたいと思う若い人たちへメッセージをお願いします。
私を含めRINGO MUSICが大切にしているのは、単にいい音楽を届けることではなく、「いかに青森に興味を持ってもらうか」を軸にした音楽活動です。
りんご畑を見たことがない、自分の街には大きなお祭りがない。そんな方にも、どこかで青森を第二の故郷のように感じ、愛着を持ってもらえるようにステージに立つことが、私たちの使命だと思っています。
いまは、活動拠点がどこであっても同じ土俵で戦える時代です。青森の文化も自然も歴史も、すべて青森県民の武器。だからこそ、まずは一歩踏み出すことが大切だと思います。
「RINGO MUSIC FES.」でステージに立つジョナゴールドさん(画像提供:RINGO MUSIC)
石塚千尋[漫画家:弘前市出身]
石塚千尋さん
漫画家。青森県を舞台にした代表作『ふらいんぐうぃっち』はアニメ化もされ、街の魅力をていねいに描く作風で知られる。現在も地元・青森県で制作活動を続けている(画像提供:石塚千尋さん)
―地元で好きな場所はどこですか?
弘前市にある巌鬼山神社(がんきさんじんじゃ)です。雰囲気がとても気に入っています。森のなかにある神社で、鳥居をくぐると大杉に囲まれます。とても静かな空間で、聞こえるのは鳥の声と、風に揺れる木々の音、小川の流れる音だけ。そこにいるだけで、神聖でありがたい気持ちになります。
子どもの頃に訪れて以来、お気に入りの場所です。学生時代に描いた漫画の背景や、『ふらいんぐうぃっち』第1巻の表紙にも、モチーフとして使わせてもらっています。
青森県弘前市の巌鬼山神社(画像提供:石塚千尋さん)
漫画『ふらいんぐうぃっち』第1巻。表紙には、石塚さんが子どもの頃から親しんできた巌鬼山神社をモチーフにした風景が描かれている(画像提供:講談社)
―『ふらいんぐうぃっち』を描くうえで、弘前や青森の風景、暮らしの空気はどのように作品に影響していますか? また、街を取材したり、実際に歩いたりするなかで、作品に取り入れたいと感じる瞬間はどのようなときですか?
『ふらいんぐうぃっち』は、「魔女が近所に住んでいたらいいな」という想いからはじまりました。リアリティのある魔女を描くには、リアルな舞台に立たせる必要がある。そこで、自分が空気感や雰囲気をよく知っている地元・青森県を舞台にしようと考えました。
魔女をメインにした漫画にしたかったので、基本的には先にその回のストーリーを考えてから、それに合う場所や背景を探します。見栄えのする景色のいい場所を描くこともありますが、リアリティを大切にしているので、できるだけ自分が実際に見て育った風景や、生活感のある場所を選んでいます。
それから、漫画を読んだ読者さんが、実際にその場所を訪れてくれたら楽しいだろうな、と思いながら描いています。
―漫画やアニメなどの作品が、地域の魅力を伝えるうえで果たせる役割をどのように考えていますか? また、作品をきっかけに弘前や青森を訪れる人に、どのような街の魅力を感じてもらえたらうれしいですか?
漫画やアニメはその土地の風土や習慣や歴史を、覚えやすく、感じやすいかたちにできるものだと思っています。
調べてみると青森には歴史的な建物や貴重なモノがたくさんあって、まだまだ世間に知られていない魅力があると思っています。それを取り入れて表現していけたらなーと、最近は自分への課題にしています。
読者さんには、実際に青森に来て漫画の世界と現実の地元の世界を重ねて体験してもらえたらいいなと思います。
漫画『ふらいんぐうぃっち』第14巻。表紙には、青森県深浦町にある「北金ヶ沢の大イチョウ」をモチーフにした風景が描かれている(画像提供:講談社)
地域のストーリーは、一人ひとりの記憶のなかに
帰るたびにほっとする津軽平野と岩木山、音楽活動の原点となった弘前市りんご公園、そして漫画の世界にも息づく神社や青森の風景——。3人の言葉からは、青森の風景や文化が、それぞれの表現のなかにさまざまなかたちで息づいていることが伝わってきます。
地域に根づく記憶をたどると、ただ訪れるだけではわからない、その地域のリアルな魅力が見えてくる。次回はどの地域のどんな記憶と風景に出会えるでしょうか。どうぞお楽しみに。
この記事の内容は2026年10月28日掲載時のものです。
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Credits
- 編集
- 包國文朗(CINRA, Inc.)