全国47都道府県のなかからひとつの地域を取り上げ、ゆかりのある方にその地域の魅力を聞く「47 Local Stories」。
第4回は「島根県」。今回は島根県にゆかりのある3名——ミュージシャンの石原慎也さん(Saucy Dog)、俳優の青山草太さん、声優の日髙のり子さんがアンケートに答えてくれました。島根で過ごした時間のなかで刻まれた記憶や、何気ない日常のなかで生まれたインスピレーションとは? 観光情報サイトやSNSには載らない、実体験をとおして見える島根県のリアルを教えてもらいます。
石原慎也(Saucy Dog)[ミュージシャン:松江市出身]
石原慎也さん(Saucy Dog)
ミュージシャン。3ピースロックバンド・Saucy Dogのボーカル&ギタリスト。故郷・宍道湖畔の情景を綴った“いつか”など、等身大の言葉と伸びやかな歌声で幅広い世代から支持を集める
―地元で印象に残っている「音」はありますか?
幼い頃からお盆には母親の実家に帰って、12人ものいとこたちとわいわい1泊するのが恒例でした。なかでも、朝方の少し涼しい時間帯に聞こえてくるキジバトやトンビ、虫の鳴き声が特に好きでした。
また、母方の祖父はシジミの漁師をしており、ときどき「シジミより」(選別作業)を手伝うこともありました。そのときの機械音や、機械で選別された貝を手作業で地面に当てながら、砂が入っていないか、中が空じゃないかを確かめるときのコツコツカシャカシャという音が、とても記憶に残っています。
―島根のカルチャーや地域の人々とのかかわりが、ご自身の音楽活動にどのように影響していると思いますか?
僕が島根に住んでいたのは17歳までで、その後は一人暮らしをはじめたので、帰省できるのは年に数回ほどです。それでも、僕は島根に誇りを持っています。
よく「島根って何があるの?」と聞かれますが、そのたびに「なんにもないけど、なんでもある」と答えます。もちろん、出雲大社や「仁摩サンドミュージアム」の世界最大の砂時計、出雲そばなどの名物もあります。でも、それ以上に人とのつながりや風景、そのすべてが僕を育ててくれたと感じています。
自分の楽曲の歌詞に、方言や地元の特定の場所を入れることがよくありますが、そうした想いがあるからなんだと思います。
―もし、地元で何かひとつプロジェクトや企画ができるとしたら、何をやってみたいですか?
島根に住んでいる人たちが自分の夢を持てるような場所づくりや、子どもと親が安心して暮らせるまちづくりなど、地域を盛り上げる取り組みをしたいと思っています。
音楽をやっている自分にどこまでできるかはわかりませんが、いちばん近い目標としては、島根県を「目的地化」すること。出雲大社や宍道湖など、いまも人気のスポットはあると思うんですが、僕が考えているのはもっと小さい単位の話です。
たとえば、「このお店の名物お父さんに会いたいから行こう」とか、「あのスイーツを食べに行こう」とか。そんなふうに、個人のお店やそこにいる人そのものが旅の最終目的地になっていったら、とても素敵だなと思います。
ちなみに、僕が生きているうちにはかなり難しいかもしれませんが、大きな夢としては、山陰新幹線を開通させたいです。
青山草太[俳優:出雲市出身]
青山草太さん
俳優。2003年に俳優デビュー。2005年には特撮ドラマ『ウルトラマンマックス』で主人公を熱演。幼少期から地元・出雲の農村歌舞伎「むらくも座」の舞台に立ち、この経験が俳優としての原点となる。2018年より出雲観光大使を務める
―地元で好きな場所はどこですか?
出雲市にある須佐神社です。御本殿の奥にある「大杉さん」と呼ばれる樹齢約1,300年(推定)の大きな杉の木があるのですが、そこから伸びている木の根に手を当て、目をつむり、草木の擦れる音や周りの匂いを感じると、当時、神社で走り回って冒険ごっこをしていたときのことを思い出します。子どもの頃は遊び場でしたが、いまでは帰郷すると必ず訪れる思い出の場所であり、癒しのスポットです。
―子どもの頃から出演されていたという農村歌舞伎「むらくも座」での経験は、ご自身の俳優活動にどのように影響していると思いますか?
夜に大人たちと一緒に公民館で稽古する高揚感。舞台の上から見える、いつもと違い少し照れたような表情をこちらに向けてくる同級生。拍手や笑顔で見守ってくれる町の人たち。公演後にかけてもらった「楽しかったよ」「よかったよ」「頑張ったね」という声。そうした一つひとつのことを、いまでもよく覚えています。
部活動とはまた違う達成感や充実感があって、小学生の頃から大人に混じってそうした経験ができたことは、いまの活動につながる大きな要因のひとつになっていると思います。
少年時代に出演していた農村歌舞伎「むらくも座」の舞台での青山草太さん(画像提供:青山草太さん)
―青山さんが演じた『ウルトラマンマックス』は、放送から20年が経ったいまもファンの心に刻まれています。出雲市で育った経験もふまえ、地元の子どもたちや次の世代に伝えたいメッセージを教えてください。
地元を離れたいと思っていた時期もありました。けれど、大人になればなるほど、子どもの頃に見てきたものや経験してきたことが自分の礎になっているんだと感じるようになりました。そして、その経験が活きる瞬間がたくさん出てきます。
だからこそ、いま暮らしている場所が都会でも田舎でも、その土地にはきっとたくさんの魅力があると思います。ぜひ宝探しをするような気持ちでその魅力を見つけて、実際に足を運び、体験し、どんどん吸収していってほしいです。
そしていつか、その土地で育った大人(ヒーロー)になってください。
日髙のり子[声優・俳優:島根県ふるさと親善大使]
日髙のり子さん
声優・俳優。声優として『タッチ』の浅倉南、『となりのトトロ』の草壁サツキ、『らんま1/2』の天道あかねなど、アニメ史に残るキャラクターを演じる。2018年より島根県ふるさと親善大使「遣島使」を務める
―島根県で好きな場所はどこですか?
松江市郊外にある玉造温泉です。出雲大社や宍道湖からは少し離れていますが、静かでとても素敵な場所です。
「美肌の湯」として知られるお湯は、透明で柔らかな肌あたりがとても気持ちいい! 自然豊かな景色を眺めながら、ゆったりと湯船に浸かれば、身も心も癒されます。
近くにある玉作湯神社では、お守りの小さな「叶い石」を境内にある「願い石」に当ててお願い事をすると叶うといわれていて、私も体験してきました!

日髙
お願い事、叶うといいなぁ……(笑)。
―島根県のふるさと親善大使「遣島使」としての活動など、島根県とのかかわりのなかで、特に印象に残っているエピソードや出会いがあれば教えてください。
現在、TSKさんいん中央テレビで、島根県の魅力を発信する番組『しまねっこの宅配便クロス』のナレーションを務めさせていただいています。
島根県の観光キャラクター「しまねっこ」、かわいいですよね〜! 以前、遣島使としての活動報告のために島根県庁を訪れた際、丸山県知事から「県庁にしまねっこのお家ができたんですよ」とうかがい、見学させていただきました。
しまねっこらしい黄色モチーフのかわいらしいお家で、とても印象に残っています。そのとき県知事と一緒にネコ耳ポーズで記念写真を撮らせていただき、忘れられない思い出になりました(笑)。
島根県観光キャラクター「しまねっこ」(島観連許諾第9310号)
―島根をまだ訪れたことがない人に、「ここだけは・これだけは体験してほしい」と薦めるなら何を挙げますか?
やっぱり、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』の聖地巡礼です!
主人公のおトキちゃんが毎朝通るたびに拝んでいた大橋をスキップしながら渡ったり、ヘブンさんが泊まっていた旅館や、「ビア(ビール)」を買った薬局のモデルになったお店を巡ったり、月照寺の大亀と記念写真を撮ったり……。路線バスに乗って、松江の街並みを眺めながら移動するのもおすすめです。
そして、もしレストランのメニューにシジミ汁があったら、ぜひ味わってみてくださいね!
島根を訪れたら味わいたい、旨みたっぷりのシジミ汁(画像提供:日髙のり子さん)
地域のストーリーは、一人ひとりの記憶のなかに
シジミを選別するときに響く音や、少年時代に立った農村歌舞伎の舞台から見えた景色、玉造温泉や松江の街並みをとおして感じる豊かさ——。今回あらためて感じたのは、地域の魅力は名所や名物だけに宿るのではなく、そこで過ごした時間や一人ひとりの記憶のなかにもたしかに息づいている、ということでした。
地域に根づく記憶をたどると、ただ訪れるだけではわからない、その地域のリアルな魅力が見えてくる。次回はどの地域のどんな記憶と風景に出会えるでしょうか。どうぞお楽しみに。
この記事の内容は2026年5月21日掲載時のものです。
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Credits
- 編集
- 包國文朗(CINRA, Inc.)