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成功する地域ブランディングとは?事例8選で読み解く手法と実践のためのステップ
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町おこしの手段や戦略として昨今注目されるテーマの一つに、「地域ブランディング」があります。これまで、名物グルメやアート、キャラクター、イベントなど多種多様な切り口から、地域ブランドの確立に成功した事例が全国各地に生まれています。
こうした取り組みは、地域の魅力を再発見すると同時に、観光や移住などさまざまな効果を生み出す点でも注目されています。
今回は、地域ブランディングの基礎知識や実践する際に踏むべきステップ、主な手法について解説。また成功例を8つ挙げ、これらの事例をふまえて地域ブランディングを成功させるためのポイントも紹介します。
地域ブランディングとは?知っておきたい基礎知識
空き店舗を再生し、「レトロモダンな商店街」としての地域ブランディングに成功した、新潟県新潟市沼垂(ぬったり)テラス商店街内の店舗
ここでは、地域ブランディングの定義・役割や注目されるようになった背景、活用できる地域資源の例など、基礎知識を解説します。
地域ブランディングの定義と役割
地域ブランディングとは、その地ならではの魅力的な資源を活かして、地域の価値を高めたりほかの地域との差別化を図ったりすることをめざす取り組みです。観光客や副業者、地域を応援するファンなど、地域に関心を持って継続的に・多様にかかわる “関係人口”との接点を生み、関係を育むことを目的としています。
地域特有の資源やその魅力を発掘し、それを「地域ブランド」としてわかりやすく定義・可視化したうえで、さまざまな媒体を通じて継続的に発信を行う、という一連の活動プロセスを含みます。
効果的な地域ブランディングは、観光客・企業の誘致や経済の活性化、雇用の創出、地域住民の活動意欲の向上といった「町おこし」に欠かせない土台づくりの役割を担うといえます。
いま地域ブランディングが注目されている理由
地域ブランディングが注目されている背景には、地域社会の課題の深刻化と、町おこしの重要性の高まりがあります。
地方では、都市部への人口集中による地方の衰退や過疎化が叫ばれてきました。昨今、日本の人口減少や少子高齢化の加速を受けて状況は深刻化し、地域産業・経済の衰退や税収の減少などへの対応が必要となっているのです。
こうした課題の解消に向けて町おこしの取り組みが各地で推進されるなか、その地域ならではの強みを打ち出せる重要な戦略として、地域ブランディングに着手する事例が生まれています。
地域ブランディングに活用できる地域資源の例
地域ブランディングに活用できる地域資源には、たとえば以下のようなものがあります。
- 農畜水産物やその加工品
- 郷土料理
- 伝統工芸品
- 歴史的建造物などのスポット
- 自然環境(景観)
- 祭礼などの伝統文化 など
香川県は地域の名物である讃岐うどんで地域ブランドの確立に成功した
その地域に深く根ざしたもの、ほかの地域にはない「その地ならでは」のものであれば、ジャンルや有形・無形を問わず多様な特徴を軸に地域ブランドの確立をめざすことが可能です。
地域ブランディングを行うメリット
地域ブランディングに取り組む主なメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- ほかの地域との差別化、競争力の向上が期待できる
- 地域住民が、地元に対する誇りや愛着を持つきっかけになる
全国各地で町おこしの取り組みが行われるようになったいま、「ほかの地域との差別化」が重要なポイントとなります。地域ブランディングは、その地ならではの個性や魅力を定義・発信するという点で差別化に貢献し、観光客の誘致や経済の活性化といった効果をあげることができます。
また、地域ブランドの確立は外部に対してだけでなく、その地で暮らす住民の意識にも影響を及ぼします。地域ブランディングを通じて住民が地元の魅力をあらためて発見し、誇りや愛着を持つようになることは、地域一体となった町おこしの推進を後押しする要素になります。
地域ブランディングの成功事例8選
ここからは、地域ブランディングの成功事例を8つピックアップし、それぞれの概要や成果を紹介します。取り上げる取り組みは、以下のとおりです。
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| 取り組み地域 | 概要 |
|---|---|
| 香川県直島町 | 企業との連携により、「島×アート」を軸とした地域ブランドを確立 |
| 栃木県宇都宮市 | 協同組合 宇都宮餃子会を中心とした活動で、「宇都宮餃子®」ブランドの確立と「餃子のまち」としての地域ブランディングに成功 |
| 青森県青森市 | 地域に根づくねぶた祭りを活用して「AOMORIブランド」の確立に寄与 |
| 東京都墨田区 | 地元の産業を発掘・PRする活動「すみだモダン」を通じ、「ものづくりのまち」としての地域ブランドを確立 |
| 熊本県 | 県のPRキャラクター「くまモン」を通じて地域ブランドを確立 |
| 香川県 | 「うどん県」のキーワードを軸に地域ブランドを確立 |
| 静岡県熱海市 | 「意外と熱海」をキーワードに従来の観光イメージを刷新し、地域ブランドの向上に成功 |
| 新潟市沼垂 | かつての市場を再生し「レトロモダンな商店街」としての地域ブランドを確立 |
香川県直島町|瀬戸内の島々を美術館に(1980年代〜)
瀬戸内国際芸術祭のにぎわい(撮影: Shintaro Miyawaki、画像提供:瀬戸内国際芸術祭)
はじめに紹介するのは、「文化村*1」「島×アート*2」を軸とした地域ブランディングに成功した香川県直島町の事例です。
直島では1970年代頃から、現代的なデザインの公共建築を軸としたまちづくりがスタート*3。80年代以降には教育関連事業を手がける企業との連携によって*4、島の原風景や生活と「アート」の融合をテーマとするさまざまなプロジェクトが推進されてきました*1。
観光客などの訪問者数は2024年時点で約75万人(1990年は約1.1万人)*5に及び、瀬戸内国際芸術祭の会期中には1シーズンに2〜3万人の外国人観光客が島を訪れる*6など、国内外で「アートの島」という地域ブランドが定着しています。
栃木県宇都宮市|餃子を地域ブランドとしてPR(1993年〜)
宇都宮餃子®のイメージ(画像提供:協同組合 宇都宮餃子会)
続いて紹介するのは、「餃子のまち」という地域ブランドの確立に成功した栃木県宇都宮市の事例です。
戦後から地元で親しまれてきた*7という餃子を軸とする町おこしの起点は1993年、餃子を通じた地域活性化などをめざす「協同組合 宇都宮餃子会」の発足*8でした。その餃子会や観光協会を主体として、それまであまり餃子を食べにくることがなかった若い女性にも親しまれるよう「ニンニクのしっかりときいた中華料理」といった従来のイメージを一新し、「宇都宮餃子®」という新たなブランドを打ち立てました。加えて、餃子に関するガイドブックやグッズの作成など、多様な取り組みも実施*9。
現在は、同市への宿泊客の約50%が来訪目的に「餃子を食べるため」を挙げています*10。さらには、年に一度開催される『宇都宮餃子祭り』に毎年約15 万人以上のファンが訪れる*7など、市の名物として餃子が楽しまれています。
青森県青森市|ねぶた祭りを再評価(2000年代〜)
知事賞・優秀制作者賞を受賞した、2018年制作のNTTグループねぶた『西王母の祝福』(画像提供:NTT東日本青森支店)
「青森のねぶた」を地域ブランドとして確立させたのが、青森県青森市の事例です。
「ねぶた」と呼ばれる巨大な灯籠が街を練り歩くこの祭りは、1980年には国の重要無形民俗文化財に指定され*11、「東北三大祭り」の一つにも数えられる*12など、青森市の名物として広く知られるようになりました。国内外から約270万人の観光客が訪れ*13、経済効果は約310億円(2025年)に及ぶ*14と推計されています。
2003年に県職員らによる研究チームが取りまとめた報告書では、地域を「AOMORI(青森)ブランド」としてブランド化することの重要性や施策案が述べられた*15ほか、青森県基本計画(2019〜2023年度)でも「青森ブランド」の確立が掲げられました*16。ここでは地域資源の一つとして「祭り」が挙げられており、青森県が早くから継続的に地域ブランディングに目を向けてきた*15こと、地元に根づく祭りが地域ブランディングに貢献できることがうかがえます。
東京都墨田区|「すみだモダン」で地域産業をPR(2009年〜)
すみだモダンのホームページ
続いて紹介するのは、「ものづくりのまち」としての地域ブランディングに成功した東京都墨田区の事例です。
さまざまな産業が栄え、工場地帯として発展してきた町の歴史を汲み*17、地域の産業を国内外にPRするべく2009年より地域ブランディングの活動がスタート*18。区内で生み出される付加価値の高い商品と、その背景にある事業者の活動を発掘・認証・PRする活動「すみだモダン」が推進されています*19。
「すみだモダン」の理念に合致する魅力的な活動や商品の認証と発信が進むほか、著名クリエイターと区内事業者の共創による商品開発やコミュニティやイベントにおける情報発信・交流も行われるなど*20、幅広い活動が特徴です。
熊本県|PRキャラクター・くまモンが全国的に有名に(2010年〜)
熊本県PRキャラクター、くまモンのイラスト ©2010熊本県くまモン
続いては、熊本県PRキャラクター「くまモン」を通じた地域ブランドの確立に成功した熊本県の事例の紹介です。
九州新幹線全線開業を翌年に控えた2010年、熊本という地をとくに関西方面にPRすることをめざす活動の一環として、熊本県PRキャラクター「くまモン」が誕生しました*21。『ゆるキャラグランプリ2011』で優勝すると、誕生からわずか2年足らずで全国で名を知られる存在に*22。
くまモンをモチーフにしたグッズやイベント・PR活動、観光キャンペーンなどがさまざま展開されており*23、くまモン関連商品の累計売上高(2011〜2024年)は1兆6,222億円に及びます。
香川県|「うどん県に改名」プロモーションで話題に(2011年〜)
「うどん県」ロゴ(画像提供:香川県観光協会)
続いて紹介するのは、「うどん県」のワードで地域ブランディングに成功した香川県の事例です。
香川県は2011年、県の認知度向上に向けて「うどん県。それだけじゃない香川県」プロジェクトを立ち上げました。地元の名物である讃岐うどんを軸としながら、そのほかにも県の魅力がさまざまあることをアピールする活動がはじまりました。
地元出身の俳優らを起用し「香川県は、うどん県に改名いたします」と宣言するプロモーションビデオは、公開から1日でアクセス数が約17万件に及ぶほど注目を集めます。そのあともさまざまなメディアに取り上げられ、「うどん県」という地域ブランドが定着しました*24。
静岡県熱海市|「意外と熱海」として従来のイメージから脱却(2013年〜)
「意外と熱海」特設サイトのトップページ(画像提供:熱海市)
次の事例は、「意外と熱海」をキーワードに地域ブランドの向上に成功した静岡県熱海市です。
熱海市は2013年に3か年計画での観光プロモーション事業を開始しました*25。実際に訪れた方には「意外と良かった」と評されるもののまだ広く知られていない、地元の隠れた魅力を発信するべく、事業のテーマを「意外と熱海」に設定*26。アンケート調査をもとに見出した「スイーツ」「レトロな街並み」といった魅力をアピールするべく*27、情報誌での発信や旅行商品・バスツアーの展開などが行われました*28。
ブランディングの結果、「温泉が強み」「シニア向け」といった従来のイメージが一新され、シニア層だけでなく若年層の観光客も数多く市を訪れるように。SNSでの口コミの拡散やメディアでのプロモーションにも後押しされ*27、2002年から200万人台を推移していた宿泊客数は、2015年以降300万人台に回復しました*29。
新潟市沼垂|空き家が年間20万人以上も訪れる場に(2015年〜)
『沼垂テラス商店街』を立ち上げた高岡はつえさんと雑貨屋「ひとつぼし雑貨店」。雑貨屋はまちの案内所を兼ねており、高岡さんを中心に運営している
最後に紹介するのは、空き店舗が多くなってしまったかつての市場を再生し、「レトロモダンな商店街」としての地域ブランド確立に成功した、新潟県新潟市沼垂(ぬったり)の事例です。
沼垂市場通りでは、空き店舗の増加や来街者の減少を受け、2010年頃から地域活性化の取り組みをスタート。新店舗の開業とイベントの実施を起点とし、SNSやチラシでの情報発信やマップの作成、名物商品の開発など多様な施策が行われています*30。
テナント入居率100%を達成*30し、「沼垂テラス商店街」として2015年に全面オープンを迎えた*31後も周辺での新規開業が進むほか、店舗の売上や来街者のリピート率も向上*30。新たな地域ブランドの確立によって、街に賑わいが戻っています。
地域ブランディングを進める6ステップと手法
効果的な地域ブランディングを推進するにあたっては、次のようなステップを踏むのが望ましいといえます。
- 場所の設定と、地域資源の棚卸しと分析を行う
- ブランドコンセプトを策定する
- 地域のステークホルダーを巻き込む
- プロモーション戦略を実施する
- モニタリングと評価を行う
- 継続的な改善を行う
各ステップのポイントと、主な地域ブランディングの手法について以下で解説します。
1. 場所の設定と、地域資源の棚卸しと分析を行う
まずは地域ブランディングの対象とする場所(=地域)の範囲を設定します。「都道府県」「市区町村」や行政区をまたぐ広域から「街区」「通り」など、さまざまな場所や範囲を対象にブランディングが可能です。
対象地域が明確になったら、その地ならではの特徴的な地域資源を洗い出し、ターゲット
層や市場ニーズをふまえた分析を通じて、地域ブランドの核となる強みを定義します。
2. ブランドコンセプトを策定する
強みとして定義した地域資源の魅力を効果的に伝えるために、ブランドコンセプトを策定します。わかりやすく独自性のあるキャッチコピーや、地域ブランドの強みや背景を言語化したメッセージが用意されることで、情報発信やイメージの形成・浸透がしやすくなります。
3. 地域のステークホルダーを巻き込む
地域ブランディング施策の実行に向けては、ステークホルダーとの関係構築・連携が重要です。自治体や地元企業、教育機関、クリエイターなどと連携することで活動の幅を広げられるほか、地域住民とコミュニケーションをとり活動への理解や協力を得ることも欠かせません。
また、教育関連事業を手がける企業と連携して地域ブランディングに取り組んだ直島の事例のように、場合によっては外部の主体との連携も必要となります。
4. プロモーション戦略を実施する
活動の推進体制が築けたら、ブランドコンセプトに基づいたプロモーション戦略を実行に移します。地域ブランディングに貢献する主なプロモーション手法としては、以下のものが挙げられます。
- Webサイト(ブランドサイトやオウンドメディア)の制作
- SNSでの情報発信
- プロモーション動画の制作
- パンフレットの制作・配布
- ECサイトの開発・商品販売
- コラボ商品の開発
- イベントやキャンペーンの企画・実施 など
5. モニタリングと評価を行う
プロモーション戦略は実行して終わりではなく、動向や反響のモニタリングと定期的な評価を行うのが良いでしょう。観光客入込数やリピート率、売上高の変化など定量的な側面と、観光客の反響や地元店舗・住民の満足度といった定性的な側面の両面から評価を行うことで、取り組みの成果と課題が見えやすくなります。
6. 継続的な改善を行う
モニタリングと評価を通じて見えた課題をふまえ、施策を改善し続けることで、より大きな成果が期待できます。地域ブランディングの活動には長期的な視点で取り組むことが重要です。
地域ブランディングを成功させるために重要なポイントとは?
本記事で紹介した成功事例をふまえ、地域ブランディングを成功させるために重要なポイントとして挙げられるのは以下の3点です。
- 地域独自の価値を明確化する
- ターゲット視点に立った価値や体験を提供する
- 社会のトレンドや新しい手法を柔軟に取り入れる
地域独自の価値を明確化する
ほか地域との差別化を図るために、地域独自の価値を発掘・定義することが欠かせません。青森市の「ねぶた祭り」のように、ほかにはない、その地ならではの魅力を地域ブランディングの軸とすることで、より観光誘致やリピート率の向上などの成果につなげやすくなります。
ターゲット視点に立った価値や体験を提供する
プロモーション戦略の検討・実行においては、ターゲットの立場に立った視点も重要です。宇都宮市が「若い女性からも親しまれる餃子」のイメージにすべくブランディングや施策を行ったように、届けたい層に合わせて取り組みの内容やブランドデザインを柔軟に設計することが求められます。
社会のトレンドや新しい手法を柔軟に取り入れる
トレンドや新しい手法を柔軟に取り入れることで、より地域ブランドの認知向上やイメージの定着などの成果をあげやすくなります。新潟市沼垂テラスの事例では、トレンドをふまえて当初活用していたFacebookからInstagramでの発信へと舵を切り、それが功を奏して情報の拡散やリアクションの増加につながりました。
地域ブランディングはどんなときに「失敗」する?
地域ブランディングの活動が「失敗」に至る例としては、以下のケースが挙げられます。
- ブランディングの方向性や成果の合意形成が不十分だった
- 施策が一時的で、継続的な実施や改善が行われていなかった
- 地域住民の理解や協力が得られず、地域一体となった施策の推進ができていなかった など
また、プロジェクトの担当者が変わったことで業務の引き継ぎが十分に行われなかったり、部署や関係部門を横断した連携意識がうまく醸成されなかったりすることも、失敗の要因になり得ます。地域ブランディングに限らず、組織内外での情報連携は非常に重要です。
「一時的なキャンペーン」や「一過性のブーム」にとどまらず「地域ブランド」を確立するためには、継続的に情報発信やイベントなどの施策を実施してコンセプトの浸透を図ったり、地域一体となって来訪者の体験価値を高めたりすることが求められます。
【監修先生コメント】地域ブランディングの壁を超えるために必要なもの

長尾 雅信先生
地域ブランディングがうまく進まない最大の壁は、地域内での「協働」をどう築き、育てていくかという点にあります。
行政や企業、住民など、ひとつの組織ではない多様な主体がかかわるため、強制力が働きにくく、利害や慣習、世代の違いから意見がまとまりにくい現状があります。また、かつて地域のなかに存在していた、多様な職種や立場の人との接点が減っており、お互いの実情が見えにくくなっていることも要因です。
そこで鍵になるのが、「コンパッション(他者を理解し、共に在る力)」を育む取り組みです。異業種や世代を越えて共通点を見つけたり、課題を共有したりするワークショップを実施することが有効です。
ワークショップを実施する時には、デザイン思考(ユーザー目線で解決策を探る手法)やグラフィック・レコーディング(絵や図形を用いて議題をリアルタイムにまとめる手法)などを取り入れ、現状を視覚化することに長けたデザイナーの協力を得るのもよいでしょう。リアルな対話を軸にしつつ、オンラインも組み合わせ、多忙な人でも参加しやすい環境づくりをすることが地域ブランディングの推進力になります。
地域ブランディング実践に向けた課題
地域ブランディングを実践するにあたってとくに重要な課題となるのが、ブランドの軸となる地域資源の発掘です。ほかの地域との差別化を図り、地元への愛着を醸成するためには、その地ならではの魅力・強みといえる資源のアピールが欠かせません。
観光名所として知られる建物・施設や名産品などがない地域でも、たとえば自然の風景や食文化といった人々の暮らしに根づくものや、歴史的な背景などを独自の魅力として打ち出せる可能性があります。また、ソフトな面に目を向ければ、ライフスタイルやコミュニティ、人そのものもその対象にあがります。
「観光資源」にとらわれず、地域のさまざまな特色に目を向けてみましょう。外部の視点を取り入れて特色を見直してみることも有効です。
まとめ|地域ブランディングの未来
その地ならではの魅力的な資源を活かして、地域の価値を高め、ほかの地域との差別化を図るための「地域ブランディング」。
地方の地域社会が抱える課題の深刻化を背景に、町おこしに取り組む自治体が増えるなか、「ほかの地域との差別化」がより重要なポイントになっていることをふまえ、地域ブランディングの必要性も今後さらに高まっていくでしょう。
*1:清水李太郎、坂井猛「アートサイト直島にみる社会的広域圏形成プロセスの展開」
*2:ベネッセアートサイト直島「島×アートの魅力」
*3:日本経済新聞「アートの直島 ポストモダン建築の町役場も見所満載」
*4:日本交通公社「Vol.8 世界が注目する“徹底的にアート”な島(香川県直島町)」
*5:直島町観光協会「直島町観光客等入込数動態調査(延べ人数)」
*6:日本政策投資銀行「直島を訪れる訪日外国人旅行者の実態調査」
*7:宇都宮市公式Webサイト「餃子のまち」
*8:宇都宮餃子会公式サイト「宇都宮餃子会とは」
*9:旅色LIKES「「宇都宮餃子」を全国に広めた仕掛け人・鈴木章弘氏に聞く!名物をバズらせる秘訣って?」
*10:宇都宮市「令和6年 宇都宮市観光動態調査」
*11:青森県「民俗文化財(重要無形民俗文化財)」
*12:JTB「東北三大祭りツアー・旅行特集|青森ねぶた祭ツアー」
*13:青森市「青森ねぶた祭」
*14:TBS NEWS DIG「「青森ねぶた祭」経済効果は310億円 東北6県の夏祭りで3年連続トップに! コロナ禍前と比べると約10%増加 2位には100億円以上の差をつける」
*15:生田孝史、湯川抗、濱崎博「地域ブランド関連施策の現状と課題 −都道府県・政令指定都市の取り組み−」
*16:青森県長ホームページ「「選ばれる青森」をめざして」
*17:すみだモダン「HISTORY「すみだモダン」の成り立ちと現在地」
*18:すみだモダン「すみだモダンとは」
*19:墨田区「すみだモダン(すみだ地域ブランド戦略)の推進」
*20:GOOD DESIGN AWARD「受賞ギャラリー」、すみだモダン「活動レポート2024」
*21:長岡商工会議所 青年部「「くまモン戦略から学ぶ気づき(サプライズ)」と題したセミナーを開催しました。」
*22:日本経済新聞「熊本の「くまモン」全国区に」
*23:くまトク「くまトクのおすすめ」、くまモンランド「今日のくまモン」「くまモンNEWS」
*24:日本経済新聞「香川県が「うどん県」に? 改名会見にアクセス殺到」、全国知事会「先進政策バンク詳細ページ」
*25:熱海市「観光プロモーション「意外と熱海」が始動しました!」
*26:PR TIMES「観光業界6社がタッグを組んで 「意外と熱海」をPR」
*27:travel voice「熱海の観光を変えたブランド施策「意外と熱海」、熱海市のキーパーソンに聞いた成功の理由、活用したJTBの地域パワーインデックス調査とは?(PR)」
*28:PR TIMES「「意外と熱海」に関するプレスリリース一覧」
*29:熱海経済新聞「熱海市の年間宿泊客数が300万人台に回復 訪日客誘致を強化へ」
*30:中小企業庁「「ここでしか出会えないモノ・ヒト・空間」のコンセプトで人々が集う場づくり」
*31:NEWSjp「「無一文になるかも」老朽化した長屋への出店断られ、地元2代目が下した決断は‥ ネコが見守り、人引き寄せる昭和レトロ商店街【地域再生大賞・受賞団体の今】」
この記事の内容は2025年12月11日掲載時のものです。
Credits
- 執筆
- 永田遥奈
- 編集
- 牧之瀬裕加(CINRA,Inc.)