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町おこし成功例10選から読み解く!持続可能な地域づくりのポイント

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人口減少や高齢化、産業の衰退といった課題を抱えるいま、地域の魅力を再発見し、新たな活力を生み出す「町おこし」の取り組みが各地で進められています。

自治体だけでなく、地域住民や地元企業、外部パートナーが連携しながら、持続可能な地域づくりをめざす動きが広がるなかで、実際に成果を上げている事例も数多くあります。

今回は、全国10地域における町おこしの取り組み事例と、成果があがった要因を紹介。さらにこれらの成功例から見えてくる、町おこしを推進するにあたってのポイントも解説します。

町おこしとは?地域振興における重要な役割を紹介

日本の街のイメージ

町おこしとは、地域の経済・社会・文化活動を活発化し、その地域の持続的な発展をめざす取り組みです。

地域の課題を解決し、持続可能な発展を実現するために、町おこしにはさまざまな方法が存在します。町おこしの主な方法として、以下のようなものが挙げられます。

  • 観光客を増やす
  • 移住・定住を促進する
  • 独自の産業を確立し経済を活性化させる
  • 地域における雇用や仕事を創出する
  • コミュニティを構築し交流を生み出す
  • 地域住民の活動意欲を高める

こうした取り組みは全国各地で展開されており、地域ならではの特色を活かした町おこしが成功しているケースも数多く見られます。

また、行政や地域団体においては、より広範な地域での取り組みを指す言葉として、「町おこし」ではなく「地域おこし」という表現も広く使われています。

町おこしが必要とされるのはなぜ?

町おこしが必要とされる背景には、都市部への人口集中による「地域人口の減少、過疎化」という課題があります。

日本では高度経済成長期(1955年頃〜1973年頃)以降、進学や就職に伴って地方から都市部へ多くの人が転出し、主に東京への人口の一極集中が起きています。

人口集中のイメージ

これによって地方では地域人口の減少、過疎化が進み、働き手の不足による地域産業・経済の衰退や税収の減少、生活・行政サービスの縮小や質の低下といったさまざまな課題が生じているのです。

現在、人口減少や少子高齢化が加速するなか、こうした課題がさらに深刻化し、地方の疲弊が進んでしまっているといえます。これらの課題を解消し各地域の持続可能性を高めるために、町おこしや地方創生が重要視されているのです。

町おこし成功例10選の一覧表

ここからは全国各地の10地域において実施され、近年、評価の定着している町おこしの成功例について、概要・成果と成功要因を紹介します。

観光 / 就業 ・移住 / 教育 / 農業 / まちづくりの5つのカテゴリに分けて、見ていきましょう。

カテゴリ地域概要と成果 
観光青森県

田舎館村

観光資源として「田んぼアート」を確立し、年間30万人以上の集客と約3,000万円に及ぶ展望料収入を実現。
長野県

阿智村

日本一の星空」を観光資源として確立・ブランド化し観光客増加を実現。ツアー来場者は延べ100万人以上に及ぶ。
埼玉県

鷲宮町

鷲宮神社が舞台となった人気アニメをテーマに、グッズ製作やイベントを実施。経済効果は1億円超に及ぶ。
就業・移住徳島県

神山町

サテライトオフィスの開設・運営支援や移住者の生活支援により、16社の移転と27名の雇用、約170名の移住が実現。
島根県

海士町

就労型お試し移住制度「大人の島留学」を実施し、全国各地の若者とともにまちづくりを推進。参画者は約500名に及ぶ。
広島県

尾道市

空き家の再生と移住希望者への手厚い支援、観光・交流の充実により、移住相談数増加を実現。
教育北海道

厚沢部町

地域での暮らしと保育園での生活を短期間体験できる「保育園留学」を実施。100家族が体験し、リピート希望率は90%超に及ぶ。
農業徳島県

上勝町

豊富な地域資源「葉っぱ」を活かして新たな基幹産業を確立し、地元の高齢者や女性が活躍できる仕事の創出を実現。
高知県

馬路村

古くからある地域資源「柚子」を活かした6次産業化の取り組みにより、主要産業の確立と観光・交流の促進を実現。
まちづくり島根県

出雲市

コミュニケーションアプリを活用した移住相談や情報発信、コミュニティ構築を実施。

【観光】町おこし成功例と成功要因

1.青森県田舎館村|田んぼアートで観光促進

青森県田舎館村の田んぼアート

青森県田舎館村の田んぼアート

青森県中央部、津軽平野に位置する田舎館村(いなかだてむら)で、基幹産業である「稲作」を活かして観光資源を確立し、地域への新たな人の流れをつくり出した事例です。

田舎館村では、1993年より村おこし事業として、稲を用いて田んぼに絵や文字を描く取り組みをはじめました。当初は3色の稲で毎年同じシンプルな図柄と文字を描いていて、本取り組みは「稲文字」と呼ばれていました。やがて用いる稲は7色12品種に、絵柄もより繊細でバラエティ豊かなものへと変化し、「田んぼアート」として定着しました。

この田んぼアートが大きな話題となり、田舎館村では全国から年間30万人以上に及ぶ集客を実現。2022年度には、展望料収入は約3,041万円に及んでいます(*1)。

〈町おこしの成功要因〉

  • 地域資源を活かして芸術性の高い観光資源をつくり上げたこと
  • 単に稲でアートをつくるだけでなく田植えや稲刈りを体験できるイベントも実施するなど、地域住民や地元大学の学生との交流・連携を図りながら取り組みを推進したこと

2.長野県阿智村|「日本一の星空」をアピールし観光促進

阿智村の星空(画像提供:阿智☆昼神観光局)

阿智村の星空(画像提供:阿智☆昼神観光局)

長野県の南端に位置する阿智村(あちむら)で、環境省により『星が最も輝いて見える場所』第1位に認定されたこともある美しい「星空」を観光資源として確立・ブランド化し、地域への新たな人の流れをつくり出した事例です。

阿智村では、2012年より『天空の楽園 日本一の星空 ナイトツアー』を開始。満点の星にくわえ、山頂までのぼるゴンドラの改装や宇宙服を着たツアーガイドによる案内など、来場者に楽しんでもらうためのさまざまな工夫を行ってきました。

開始初年度に約6,500名だった来場者は年々増加し、2023年3月末までで、イベント累計来場者数は100万人以上に(*2)。また、村の主要観光地・昼神温泉郷の宿泊客は、当初そのほとんどを占めていたシニア層だけでなく、20〜40代も多く見られるようになるなど、新規マーケットの開拓にも成功しています。

〈町おこしの成功要因〉

  • 地域の自然資源を活かしてブランド化を行ったこと
  • さまざまな企業と連携して共同プロモーションを行い、SNSでの発信を強化したこと
  • 地域住民に向けた情報発信にも注力し、村民が観光交流の意義を理解し、地元に誇りが持てる状態も醸成できたこと

3.埼玉県鷲宮町|人気アニメ『らき☆すた』の聖地巡礼

毎年7月に開催される鷲宮の夏の例祭「八坂祭」で渡御される「らき☆すた神輿」(画像提供:久喜市商工会鷲宮支所)

毎年7月に開催される鷲宮の夏の例祭「八坂祭」で渡御される「らき☆すた神輿」(画像提供:久喜市商工会鷲宮支所)

埼玉県北東部に位置する鷲宮町(わしみやまち:現 久喜市)において、町にある鷲宮神社が舞台となった人気アニメにまつわる取り組みにより、地域への人の流れの創出、増加を実現した事例です。

女子高生たちの日常を描いた人気アニメ『らき☆すた』は、2007年よりTV放映がはじまりました。すると、登場人物の実家のモデルである鷲宮神社を、ファンが「聖地巡礼」で訪れるようになり、鷲宮町ではキャラクターと地場産業の魅力をかけ合わせたグッズの製作、イベントの開催、特別住民票の交付などを実施しました。

2007年12月のイベントには約3,500名が来場し、翌2008年の初詣には約30万人(前年比17万人増)の参拝客が訪れるなど、観光の促進が実現。これら一連の取り組みにより、1億円を超える経済効果が生まれています。

また、アニメ放送終了から15年以上が経つ2023年時点でも、定期的なイベントの開催とファンとの交流は続いています(*3)。

〈町おこしの成功要因〉

  • 地場産業と人気アニメを関連づけたグッズ製作や、地元商店に限定したグッズ販売など、地域資源の活用と地域振興を重視した取り組みを実施したこと
  • ファンの一部がボランティアとしてイベントの運営に携わるなど、地域住民や地元商店との連携・交流を生み出したこと
  • 収益の一部を用いて街路灯を設置するなど、取り組みの成果を地域住民に還元したこと

【就業・移住】町おこし成功例と成功要因

4.徳島県神山町|サテライトオフィスで人材や企業を呼び込む

サテライトオフィス「えんがわオフィス」の内観(画像提供:大南信也さん)

サテライトオフィス「えんがわオフィス」の内観(画像提供:大南信也さん)

徳島県中央部、一級河川 鮎喰川の上流に位置する神山町(かみやまちょう)で、サテライトオフィス(本拠点から離れた場所に設置するオフィス)の誘致によって、移住者の増加や地域における雇用の創出に成功した事例です。

神山町では1999年より、アーティストをはじめとした多様な職種の人々に町を訪れてもらうことを目的とした取り組みをスタート。その過程で次第にIターン需要が高まる中、あるスタートアップ企業が神山町に新たな拠点を設けたことをきっかけに、多くのIT関連企業がサテライトオフィスを神山町に置くようになりました。

2016年9月時点で16社の移転と27名の雇用が実現し、移住者は170名にのぼります(*4)。2023年4月には、人材育成を目的に、デザインやテクノロジー、起業家精神を学ぶ高等教育機関「神山まるごと高専」も開校。同年の出生や死亡以外の要因による人口の動き(社会動態)においては、転出よりも転入数が上回る結果になっています(*5)。

(※サテライトオフィスプロジェクトに関連する移住者に限った数字ではありません)

〈町おこしの成功要因〉

  • 町のNPO法人と県や町の連携により、高速インターネット環境の整備やオフィス開設・運用費用の補助、移住する社員の生活支援など、サポート体制を充実させたこと
  • 進出企業と町内企業や地域住民との交流を促進し、進出企業が集落活動やまちづくりに貢献できる仕組みをつくったこと

5.島根県海士町|大人の島留学で就業・移住体験

海士町の木路ヶ崎

海士町の木路ヶ崎

島根県の北に浮かぶ隠岐諸島 島前(どうぜん)の海士町(あまちょう)において、就労型お試し移住制度の導入により、新たな人の流れや雇用の創出に成功した事例です。

海士町では2020年より、全国各地の若者(20〜29歳程度)が島で暮らし、働くことができる制度「大人の島留学」を始めました。参画者は3か月〜1年間にわたって島で生活し、島の仕事に携わり、地域住民と交流します。

海士町から始まった本取り組みは、同じく島前の西ノ島町(にしのしまちょう)・知夫村(ちぶむら)にも広がり、開始以来5年間の参画者は約500名に及んでいます(*6)。

〈町おこしの成功要因〉

  • 来島時のスタートアップ研修、滞在中のフォローアップ研修など、島で暮らし地域の住民と交流するためのサポートを充実させたこと
  • 参画者に「当事者」として島のまちづくり・町おこしに携わることを促し、ともに島が抱える課題の解決に取り組んでいること

6.広島県尾道市|空き家再生プロジェクトで移住促進

尾道市の様子(画像提供:尾道空き家再生プロジェクト)

尾道市の様子(画像提供:尾道空き家再生プロジェクト)

広島県東部に位置する港町 尾道市(おのみちし)において空き家の再生を軸とした取り組みを通じて、移住・定住者の増加を実現した事例です。

尾道市では2002年度より空き家バンクの運営を行い、さらに2009年からは「NPO法人 尾道空き家再生プロジェクト」との連携によって、情報発信や空き家の再生・有効活用に取り組んできました。

同NPO法人が主体となった現在の取り組みは、家主と移住希望者のマッチングから、定住に至るまでの移住支援、空き家を活かしたコミュニティづくりや交流の促進まで多岐にわたります。

プロジェクトを通じて再生された空き家は100件を超え、2023年時点で登録された空き家は160軒に(*7)。県内外からの移住相談数も年々増加しています。

〈町おこしの成功要因〉

  • 空き家の再生だけでなく、セルフリノベーションや暮らしにまつわるアドバイスなど、充実した移住・定住支援で移住希望者を後押ししていること
  • サイクルツーリズム(自転車を活用した観光)をはじめ「観光交流の拡大」にも注力し、観光から移住への流れの創出を試みたこと
  • 古民家を再生したゲストハウスを観光や地域住民との交流の拠点として運営し、収益をプロジェクトの資金源とすることで、持続可能な活動を実現していること

【教育】町おこし成功例と成功要因

7.北海道厚沢部町|保育園留学で新しいかたちの教育を提供

北海道厚沢部町の認定こども園「はぜる」の園舎(画像提供:株式会社キッチハイク)

北海道厚沢部町の認定こども園「はぜる」の園舎(画像提供:株式会社キッチハイク)

北海道 渡島半島の日本海側に位置する厚沢部町(あっさぶちょう)において、企業が主体となった「保育園留学」プログラムを通じ、地域への人の流れの創出と移住の促進が実現した事例です。

保育園留学とは、子どもを通わせたい保育園がある地域での暮らしを1~2週間体験できるプログラムです。株式会社キッチハイクが、厚沢部町で2021年より保育園留学事業をスタート。参加する家族に対し、子どもを短期間預かる「一時預かり制度」のほか、移住体験住宅、農作業をはじめとした町での生活体験をパッケージとして提供しています。

事業開始以来、多くの問い合わせと申し込みが寄せられ、2023年時点ですでに100の家族が保育園留学を体験。リピート希望率は90%以上にのぼります。また、本取り組みは厚沢部町を起点に全国40以上の地域にまで拡大し、留学を体験した家族の1%ほどが移住に至っています(*8)。

〈町おこしの成功要因〉

  • テレワークが行えるよう移住体験住宅のネットワーク環境を整えたり、慣れない土地での医療との接続をサポートするオンライン診療サービスを導入したりと、滞在中の支援を充実させたこと
  • 旅先で寄付が行える「旅先納税®️」の仕組みを導入し、寄付金収入を得るとともに電子クーポン(返礼品)による地域での消費促進を行うことで、継続的に事業を運営できる基盤をつくったこと
    (※「旅先納税®️」は、株式会社ギフティの登録商標)

【農業】町おこし成功例と成功要因

8.徳島県上勝町|町おこしの先駆け事例となった「葉っぱビジネス」

彩ブランドのつまもの(画像提供:株式会社いろどり)

彩ブランドのつまもの(画像提供:株式会社いろどり)

収穫農家の方が出荷準備をしている様子(画像提供:株式会社いろどり)

収穫農家の方が出荷準備をしている様子(画像提供:株式会社いろどり)

徳島県の中央部、勝浦川沿いに位置する上勝町(かみかつちょう)において、地域資源である「葉っぱ」を活かし、新たな地域産業の確立と仕事・雇用の創出に成功した事例です。

上勝町では、寒波の影響で町の主要産業が打撃を受けたことをきっかけに、1986年より町の山々にある葉っぱを「つまもの(刺身などの日本料理を彩るつけ合わせ)」として販売する事業をスタートしました。

営農戦略や栽培管理は農家が、受注や精算、流通は農協が、そして市場分析や営業活動、システム運営は地元企業 いろどりが担う、三者の連携によって事業が運営されました。

本ブランド「彩(いろどり)」の年商は、2023年度には約2億3,000万円に(*9)。葉っぱビジネスには、町の高齢者や女性が多く活躍し、農業体験希望者や移住希望者も増加しました。また視察などによって交流人口が増えることによる経済効果も大きなものとなっています。

〈町おこしの成功要因〉

  • 地域資源である葉っぱを活かし、町民の半数近くを占める高齢者や女性の活躍の場を創出したこと
  • 事業継続に向け、農業体験や長期研修など後継者の育成や就農のサポートにも取り組んでいること

9.高知県馬路村|地元の農産物・柚子で村の収益増加

30年を超えるロングセラー商品となったドリンク「ごっくん馬路村」(画像提供:馬路村農協)

高知県馬路村の柚子収穫トラックの様子(画像提供:馬路村農協)

高知県安芸郡の馬路村(うまじむら)において、地元の柚子を活かした「6次産業化」によって、新たな主要産業の確立とファンの増加、さらには地域への人の流れの創出を実現した事例です。

馬路村では1960年前後に柚子の栽培を開始し、1979年に発売された佃煮を皮切りに柚子の加工事業を展開。ぽん酢しょうゆ「ゆずの村」や、はちみつ入り柚子飲料「ごっくん馬路村」が、西武百貨店『日本の101村展』でそれぞれ最優秀賞、農林部門賞を受賞。そこから広く知られるようになり、全国に馬路村の商品のファンを増やしてきました。

柚子関連商品にまつわる年商は、約30億円規模におよびます。また柚子収穫の安全を祈願するお祭り『ゆずはじまる祭』に5,000名もの観光客が訪れたり、村での暮らしを体験できる『馬路村ワーキングホリデー』に村外の若者が参加したりと、観光や交流の促進にもつながっています(*10)。

〈町おこしの成功要因〉

  • 古くからの地域資源である柚子を活かしてさまざまな商品を生み出し、馬路村の商品であることを前面に押し出したPRを行ったこと
  • 農協と村役場、地域住民の連携によって村全体で取り組みを推進したこと

【まちづくり】町おこし成功例と成功要因

10.島根県出雲市|アプリを活用したデジタル町おこし

観光情報についてオープンチャット内で人々の声を募集するイメージ(画像提供:出雲市)

観光情報についてオープンチャット内で人々の声を募集するイメージ(画像提供:出雲市)

島根県中東部に位置する出雲市(いずもし)における、コミュニケーションアプリを活用した移住支援や観光・交流促進の事例です。

出雲市では2023年より、アプリを活用した移住相談の運用をスタート。友だち登録を行ったユーザーは、助成金をはじめ移住にまつわる相談ができるほか、移住相談会や移住体験ツアーなど市が実施する取り組みについての情報も受け取れるようになりました。

現在は、移住を考える方に限らず多くの人々に出雲市の魅力を伝えるべく、新たに出雲市観光・移住公式アカウント「出雲ファンクラブ」として情報発信が行われるほか、アプリの「オープンチャット」でのコミュニティ構築も進められています。

このように、近年はSNSの活用に加え、行政や地域社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する動きが活発化しており、町おこしの手法も大きく進化しています。

今後は、地域の特性に合わせたデジタル活用によって、より効果的かつ持続可能な町おこしが進んでいくと考えられます。

町おこしを成功させるために必要なポイントとは?

特産品を活かした町おこしのイメージ

各地域における町おこしの成功例をふまえ、町おこしを成功させるために必要なポイントとして以下の3つが挙げられます。

  • いまある地域資源や特産品を活かす
  • 地域住民に協力・参加してもらう
  • 持続可能な取り組みにする

いまある地域資源や特産品を活かす

特産品の柚子を活かして多様な商品を生み出した高知県馬路村の取り組みや、村から見られる星空を観光資源として確立した長野県阿智村の成功例のように、地域にすでにある資源や特産品を活かすことがポイントのひとつです。

地域資源を活用することは、町おこしの取り組みに「その地域ならでは」の個性や魅力、「その地でなければ体験できない」という価値を与えます。

こうした地域の特性をアピールすることが、地域外の人が観光で訪れたり移住を希望したりする動機や後押しになるほか、地域住民が地元に誇りを持ち、活動意欲を高める助けにもなるでしょう。

地域住民に協力・参加してもらう

町おこしの取り組みを進めるにあたっては地域資源活用のアイデアや人手が必要で、国や自治体だけでできることには限りがあります。

そのため、村民が一丸となってつくり上げた青森県田舎館村の「田んぼアート」や、地元商店街全体でイベントを盛り上げた埼玉県鷲宮町の成功例のように、地域の人々を巻き込んでともに取り組みを推進することが重要です。

また、地域を訪れた観光客や移住希望者にとっては、住民と交流し、住民の地元に対する誇りや町おこしへの積極的な姿勢に触れることが、移住後の暮らしへの安心感になり得ます。

持続可能な取り組みにする

町おこしの成果を挙げるためには、長期的に取り組みを続けていくこと、そのために取り組みを持続可能なかたちにすることが欠かせません

寄付の仕組みを導入した北海道厚沢部町の「保育園留学」や、再生した古民家を交流拠点として運営し資金源とする広島県尾道市の「空き家再生プロジェクト」のように、事業を続けるための基盤を確立することは重要なポイントです。

また高齢化や過疎化が進む中では、資金面だけでなく、後継者の育成や新規就農の支援に注力する徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」のように「担い手」の観点でも、事業継続を考える必要があります。

【町おこしを成功させるには?米田誠司先生の解説】

米田 誠司先生

10事例を見てきましたが、町おこし(地域おこし)成功のポイントは何でしょうか。

それは、まず課題に正面から向き合う当事者意識、そして課題解決を乗り越えて各地域で創造される新しい価値だと思います。町おこし(地域おこし)は現状の課題認識から始まりますが、それらやめざすべき目標を仲間と共有できているでしょうか。また行政任せにせず、他人事でなく自分事として取り組んできたでしょうか。

そしてもうひとつ今の時代に大切なことは、町おこし(地域おこし)を地元住民だけで考えないということです。観光、滞在、交流等を切り口に外部の応援団と一緒に考え行動する、これがこれからの町おこし(地域おこし)に必要な枠組みだと思います。

まとめ|町おこしの未来を考える

地域における経済・社会・文化的な活動を活発化し、その地域の持続的な発展をめざす「町おこし」。少子高齢化の進行や人口減少がさらに見込まれる日本において、今後も町おこしの重要性は増していくものと考えられます。

今後の町おこしにおいては、行政だけに頼らずに地域住民が主体となって取り組みを進めることも重要です。そのため、今後は町おこしにおいて民間のアイデアや動きと政策・制度をつなぐ中間組織が機能していくことが、求められるようになっていくのではないでしょうか。

この記事の内容は2025年6月24日掲載時のものです。

Credits

執筆
永田遥奈
編集
牧之瀬裕加(CINRA,Inc.)