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地域のネットワークを守る。何年たってもやりがいを感じられる場所

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それぞれの場所で、それぞれの仕事を通じて、誰もが「大切にしてきたこと」「叶えたいこと」を心に宿しているはず。本記事では、働く人々のそんな想いに注目したストーリーをお届けします。

お話をうかがったのは、NTT東日本グループのNTT-ME設備マネジメント部の佐藤さん。「地域」を軸に据えていた学生時代の就職活動から自分を変えたエピソードまで、等身大の思いを語っていただきました。

地域のネットワーク環境をつくり、守る

私の所属する「ネットワークプロビジョニング部門」は、NTT東日本グループがお客さまへ長期的に安定した通信サービスを提供するために、どのような設備を、どこに、どうやって構築するかを計画し、実行する役割を担っています。たとえば、地域が必要とする通信容量に対して、NTT東日本のルーターやサーバーなどの通信設備が十分でないと、お客さまの通信がつながりにくい状況になってしまいます。そこで、地域に必要な設備の容量を高精度に予測し、増設計画を立案していく、そのようなことを日々行っています。

NTT-ME 設備マネジメント部 ネットワークプロビジョニング部門 インフラ高度化担当の佐藤俊平さん

私たちには、お客さまが電話やインターネットをスムーズに使えるように、ネットワークの品質を守る大きな責任があります。それは地震や台風、大雨などの災害時も変わりません。もしもNTT東日本グループが運用・保守をしている通信設備にトラブルが起これば、1秒でも早く元通りにする必要があるのです。

大規模な災害が発生すると、NTT東日本グループでは「災害対策本部」が立ち上がります。そこには、NTT東日本グループの通信設備をマネジメントする組織や被害状況に応じてきめ細やかなお客さま対応を検討する営業統括組織、会社として対外的な対応を担う広報組織など、さまざまな組織から人が集まり、それぞれの役割ごとに班に分かれて災害対策にあたります。私は以前、NTT東日本の災害対策室に在籍しており、全社の災害対策を統制する立場を担っていました。

災害対策室の主なミッションは、有事の際に召集されたメンバーが、判断に迷うことなく動けるよう、普段から災害対策本部の意思決定プロセスや役割分担などのルールを整え、オペレーションを磨いておくことです。

加えて、気象予報会社と情報交換して通信設備の被災を予測したり、被災地での復旧活動を見据えて地方自治体や電力・ガスといったインフラ事業者との関係構築をしたりと、外部機関と連携しながらさまざまな状況に対する備えを行っています。

災害対策室での当時の活動の様子
年数回、情報連携のフォーメーションなどを確認・検証するために実施する模擬訓練の様子。当時は企画・運営も佐藤さんが担当

地域のために長く走り続けられるのは、きっとこの会社だけだから

以前所属していた災害対策室では、有事の際に地域の社会・経済活動を一刻も早く復旧させることが主なミッションでした。一方で、現在所属しているネットワークプロビジョニング部門では「地域の発展を支えるネットワーク」を真剣に考え、具現化し、ビジネスの進化や日々の人の暮らしを支える役割を担っています。

自分の取組みが地域社会にポジティブな影響をもたらす。この実感が、いまこの会社で働く大きな意義だと感じています。そしてこれは、私がNTT東日本への入社を決めた理由でもあります。

私は、「地域社会に大きな影響を与える仕事がしたい」という想いを軸に就職活動をしていました。そのなかで「地域密着の事業を展開し、すべての営みが地域社会に直結している」NTT東日本に興味を惹かれ、入社を決意。就職活動の過程で出会ったOBの方々が「地域の通信インフラを支えているんだ」と誇らしげに語る姿も非常に印象的でした。

加えて、私が就職活動の際にもうひとつの軸として重視していたのは、「何歳になっても仕事にやりがいを感じられるような、長く働ける環境であること」。そんな私にとって、地方に寄り添いながらビジネスを展開し、たとえ職種が変わっても「地域のため」という軸がぶれることなく働き続けられる、NTT東日本への就職に迷いはありませんでした。

人を動かすために、「想い」を伝える

地方にも目を向けて、寄り添いながらビジネスをしたいと考えて入社し、初めて配属された地域は私の地元である北海道。さっそく自分の想いが叶えられたことに驚きと喜びを感じたことを覚えています。そこではNTT東日本が管理している通信設備の設計・運用・保守に携わりました。

それから約4年後、東京本社の災害対策室へ異動。2023年からは、通信設備の構築や防災、ICTを活用した効率的なインフラの維持管理など幅広いソリューションをワンストップで提供するNTT-MEのネットワークプロビジョニング部門に異動しました。業務の内容や場所は少し変わりましたが、入社してから一貫して東日本エリア全域での地域の発展に向き合ってきました。

キャリアのなかで大きな転機となったのは、災害対策室に所属していたときに担当した、国際的な大規模スポーツイベントにおける「NTT東日本統括本部」の構築・運営です。

当社は、競技映像の配信業務や各競技会場と大会組織委員会をつなぐ、通信サービスの提供と保守を任されていました。そして、私の所属していた災害対策室は、それに対する全社的な危機管理を担当することになりました。経緯としては、イベントでトラブルが発生した際の復旧対応に、災害対策のフォーメーションを活用することが最適と判断されたからです。

「NTT東日本統括本部」は、大会で使用される回線のみならず、その周辺の回線も含めたNTT東日本が提供するサービス全体を俯瞰し、トラブルが発生した際は会社全体から情報を収集して意思決定をする組織です。

たとえば回線を24時間体制で監視し、トラブル発生時には迅速に原因を特定。その後、修理チームを現地に派遣して復旧作業を行う、というフローを実行します。

この過程でミスが起こると、通信が使えない時間が長引き、競技観戦はおろか、競技自体が進行できない可能性が高まります。そのため、トラブルが起きても最短で復旧できるよう、正確かつ迅速に情報収集・意思決定が行える仕組みを整えていきました。

私は、これまでに蓄積してきた災害対策本部の危機管理ノウハウを活かしてイベント対応に取組むと同時に、そこで得た経験を今後の災害対応につなげることをめざしました。

しかし、当時はコロナ禍の真っ只中。「三密回避」が叫ばれる状況で、対面で情報共有を行っていた従来の災害対策のオペレーションが通用しない事態に直面したのです。

そこで、新しい本部運営のかたちとして、オンラインの情報連携ツールを導入。情報共有の方法や意思決定のプロセスは、本部のメンバーと意見を交わしながら慎重に決めていきました。決まったことをまずは試験的に運用し、課題があれば再検討というふうに試行錯誤を繰り返すなかで、徐々にオンラインとリアルを組み合わせたハイブリッド形式での本部運営のベースが完成し、大会期間中の実運用まで完遂することができました。

私の当時の役割は、本部運営の仕組みづくりや情報連携の方向性などを決めるリーダー。経営幹部を含む数百人単位の本部の関係者に対し、主体的に組織をリードする必要がありました。ただ、淡々と指示を出すだけでは誰も動いてくれません。このとき私は「人を動かす」難しさを感じていました。

そこで気づいたのは、まず自分自身が目的をはっきりと理解し、「なぜこれをやるのか」「どれだけ重要なのか」を自分の「想い」とともに、自らの言葉でまっすぐ伝えることの大切さ。そうすることで、徐々に熱量が伝わり、結果として周りを巻き込んでいくことができました。この仕事のスタンスは、ネットワークプロビジョニング部門に異動したいまでも変わっていません。

仕事観を大きく変えた、組織方針の転換

もうひとつ、私の仕事観を大きく変えた出来事があります。それは、災害対策室に在籍していた際、組織方針が「地域課題解決型」の災害対策へシフトしたことです。単純に、自社の通信設備の故障を早く復旧させるのではなく、「お困りごと」をもとに優先事項を決め、被災した地域の社会経済機能を力強く支援していくことに軸足を移すことになりました。

災害時、お客さまの被災状況によって、どこを優先して復旧すべきかが変わってきます。たとえば病院のような施設では、まず「電話回線」の復旧を急ぎつつも、医療関係者同士の情報交換にスマートフォンでの通話やSNSアプリなどが使われている実態を踏まえ、「インターネットに関わる回線」の復旧どちらを急ぐべきかなど、早急に対応すべきことを検討。お客さまが求める通信を、お客さまが求める優先順位で、いかに的確に復旧していくか、に重点を置いて考えていきます。このように、地域課題解決型は、単に我々の目線での回線復旧を急ぐのではなく、地域社会やお客さまのニーズを優先するのです。

これによって、より効果的な対応ができるようになり、早期に日常生活に戻れるよう支援することが可能になります。

この方針転換を通じて、私は「地域に寄り添う」という言葉の意味を強く実感しました。有事・平時を含め、その業務の目的として社会課題を少しでも解決に導き、地域をよりよくしていく。これらを深く理解しながら、自然と業務に熱中していました。就職活動中にOBの方々が言っていた「地域に貢献できる喜び」とはこういうことなのかと、自分のなかであらためて気づかされたのです。

「地域ファースト」でより良い未来のために

「地域課題解決型」の災害対策は、被災者が日常生活を早期に取り戻すための鍵となると考えています。しかし、地域の通信回線の復旧は1企業だけではできないのも事実。ほかのインフラ事業者の協力を得てはじめて可能となります。

そのため、災害対策室では、各自治体の災対対策本部に派遣された社員からの情報をもとに、普段から自治体と関係を築いているNTT東日本が、有事の際に情報連携の中心となり、複数の企業と協力して地域の早期復旧に努めています。また、復旧に向けた調整や体制整備も進めています。このような「地域ファースト」の災害対策をシステム化し、長く続けていくことが大きな意味になると感じています。

災害対策の目的は、被災地をもとの状態に一日でも早く戻すこと、そこから元の状態以上の環境へと反転した状態にすること。それと同時に、可能な限りマイナスにならないための基盤を災害が起きる前につくることだと思います。一方で、私が現在取組んでいるネットワークの計画・構築は、日常的に地域の発展にどれだけプラスを積めるかが問われるのです。

アプローチは異なりますが、私がめざす先にはつねに「地域のより良い未来」があります。地域に対する関わり方は変わっても、地域の価値や魅力をさらに高めるために、これからもアクセルを踏み続けたいと考えています。

この記事の内容は2023年12月12日にNTT東日本グループの社内報にて取材・制作した記事を、本メディア用に再構成し、掲載しております。

Credits

取材・執筆
株式会社産業編集センター
撮影
株式会社産業編集センター
編集
exwrite、CINRA, Inc.