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蛙亭イワクラ、ガチで地方創生を考える。地元・宮崎を盛り上げる妄想全開の計画とは?

【この記事は2025年6月13日までの限定公開です。お早めにチェック!】
人気お笑いコンビ・蛙亭のイワクラさんは、宮崎県小林市出身。普段のトークでも宮崎弁がゆる〜く飛び出し、YouTube『宮崎よかとこチャンネル』では絶品宮崎グルメを紹介。さらには、宮崎県や小林市のPR大使を務めるなど、地元愛は誰にも負けません。
そんなイワクラさんに、今回はズバリ聞いてみました。
「もし宮崎の地方創生をガチでやるなら、何をしたい?」
妄想爆発! ……と思いきや、意外とリアルな話も!
記事後半では、地方創生の実践者で、宮崎県都農町(つのちょう)を盛り上げる株式会社イツノマの渡邊さんと大盛り上がり。話すうちに見えてきたのは、「自分だからこそできる地方創生」のかたちでした。イワクラさんがたどり着いた答えとは……!?
実はめっちゃ憎んでいた地元。でも大阪に出てみると……

こんにちは。蛙亭のイワクラと申します!
私はいまでこそ宮崎愛あふれる人間ですが、実は地元で暮らしていた頃、そんな感情は全くなかったんです。むしろめっちゃ憎んでいました。
宮崎は当時、テレビも民放が2つしかやってなかったんですよ。

M-1グランプリも宮崎では生放送がないから、あとから観るしかなくて。ネタバレ必至…。
それに、ゴールデンタイムの月曜9時に放送される2番組は、どっちもサスペンス! 週の初めから殺人事件でテンションダダ下がりで。娯楽を求めて地元のレンタルショップに行くと、同級生にバッタリ会ってしまうのが、あるあるでした(笑)。
でも、よしもとの養成所・NSCに入るために大阪に出たら、なんもないと思っていた地元が、めっちゃいいとこだったんだ! と気づきました。

大阪では、鳥や虫の鳴き声も聞こえないし、星も見えなくて、ごはんの味も全然違う……、って結構衝撃だった。
そのあと、上京したときに宮崎出身の構成作家の方たちが誘ってくれて、宮崎の美味しいグルメを紹介したり、宮崎出身の芸人と話したりする、宮崎特化型YouTube『宮崎よかとこチャンネル』をはじめることになったんです。
はじめてYouTubeのお話をいただいたときは、上京したてで警戒心MAXだったので「業界の人は怖い……」とスカしちゃったんですけど、スタッフのみんながすごく優しくて続いています(笑)。
今回、「私イワクラが、もし宮崎の地方創生をガチでやるなら?」という面白いお題をもらったので、この機会に宮崎でどんなことをしたいか、本気で妄想してみたいと思います!

もしもーし、未来の宮崎ってどうなってますか?
蛙亭イワクラが地方創生をガチで妄想する
元知事・東国原さんはやっぱりレジェンド!
ただそもそも、地方創生がどういうことなのか、私イワクラはよくわかっていなくて……(笑)。
でも、東国原元知事が「宮崎をどげんかせんといかん!」って、奮闘していたときの宮崎の盛り上がりは、めちゃくちゃ印象に残ってます。

県外の親戚から「宮崎は何もねえ」って言われっぱなしだったのが、そこでガラッと変わったんだよね!
マンゴーにきんかん、地鶏、チキン南蛮――いまみんなが思い浮かべる「宮崎のイメージ」って、ほぼ東国原さんが広めてくれたんじゃないかなって。それぐらい勢いのあることを私もやりたいですね〜〜。
さて! どれも妄想なんですけど、「もし宮崎の地方創生をガチでやるなら、何をしたい?」というお題で、やりたいこと3つ考えてみました!
【イワクラが宮崎の地方創生でやりたいこと】
妄想1 宮崎の食をもっと広めたい!
妄想2 お笑いイベントを宮崎で!
妄想3 バスツアーでイワクラ思い出の地へご案内!
妄想1. 宮崎の食をもっと広めたい!
~チキン南蛮はみんなを元気にする~
妄想1つ目は、宮崎の食について!
大阪に出た頃、お店のメニューにチキン南蛮があったので頼んでみたんですよ。そしたら、唐揚げにタルタルソースをかけたものが出てきて……。
「チキン南蛮って書いてたのに! 嘘つき!」って衝撃を受けました。

宮崎県民のソウルフード・チキン南蛮。鶏肉に小麦粉、卵の順でつけて揚げて、甘酢に浸すのがポイント。誤解されがちだけど、唐揚げとは別物なんです!
唐揚げにタルタルソースをかけただけのチキン南蛮を食べて、宮崎の味は自分でつくるしかないんだ……と気づいて、ネットでレシピを見ながらチキン南蛮をつくったんですよね。
それを当時のシェアハウスのみんなに食べさせたら「うまいな」「宮崎すげえ」ってめっちゃ喜んでもらえたのがうれしかったですね〜〜!

本場のチキン南蛮は、いつ食べてもうまい!
こないだも劇場でチキン南蛮を振る舞ったら、普段テンション低めの芸人も「うますぎる」ってテンション爆上がり!
だから食の力って本当にすごいと思う! 私のYouTubeチャンネルでチキン南蛮のつくり方を紹介したときも、ハリセンボン春菜さん、チュートリアル徳井さん、阿佐ヶ谷姉妹さんとかに「見たよ!」「実際につくったよ!」って声をかけてもらってうれしかったし、手ごたえを感じました。

今回お邪魔した、宮崎県都農町『田舎家』のチキン南蛮
だから宮崎の食をもっと広めたいというか、とにかくおいしいからみんなに食べてもらいたい! っていう気持ちが強くて。チキン南蛮だけじゃなくて、地鶏、宮崎牛、フルーツ、野菜、お米……宮崎にはおいしいものがいっぱいあるんです。

あと3年以内に、東京で宮崎居酒屋を開くのが夢! お酒はあれを出したい、これも食べてもらいたい……って、夢ばっかり語っているけど(笑)。
妄想2. お笑いイベントを宮崎で!
~M-1グランプリが生放送されない陸の孤島・宮崎にお笑い文化を~
妄想2つ目は、お笑い!
さっき話したように、宮崎ではお笑い番組も少なくて、M-1グランプリも生放送されず、宮崎が切り離されているみたいで、すっごい疎外感がありました。
私イワクラは子どもの頃、吉本新喜劇を見て感動して、「よしもとに入る!」と決めたんです。お笑いで人生が変わったし、お笑いに助けられてきた。だから、宮崎の子どもたちにもっとお笑いを見てほしいし、身近に感じてもらいたいんです。
だから、お笑いライブを月イチ宮崎でやりたい!特に、若手のネタを見る機会はほぼないと思うので、同世代の芸人と一緒に宮崎に行きたいな〜〜〜。
あ、それと、年に一度くらいお笑いと音楽の大きなフェスを開催したい!
地元小林市で凱旋ライブを3回やったので、それをパワーアップさせて、音楽やってる先輩芸人を呼んだり、宮崎の食べ物やお酒のブースを出してもらったりしたいです。

宮崎にはお面を付けて踊る「ひょっとこ踊り」っていうのがあるから、みんなで一緒に踊っても楽しそう(笑)。

『田舎家』に飾られていたひょっとこのお面
妄想3. バスツアーでイワクラ思い出の地へご案内
~不便なこともあえて楽しむ!~
妄想3つ目は、ずばりバスツアー!
地元・小林市を巡りたいんです。高校時代から通っている食堂で、チキン南蛮を食べて。
あと、都会の人からすると「なんだよこれ!」ってなるかもですが、古い……というかレトロな雰囲気があるレジャーランドの「のじりこぴあ」にも行きたい(笑)。昔はすごく栄えていたレジャーランドで、ローラー滑り台とかゴーカートとかがあって。そんな思い出の地で、ピクニックとかレクリエーションとかしたいです!

もうあまりお客さんが来ないから、ゴーカートは係員さんを電話で呼ばないと動かないんだけど、こないだ15分くらい来なかった(笑)。そういうやり取りも楽しい!
あと、高校時代に通っていた隣町にある「京町温泉」も、めっちゃいい温泉! ただ、正直すたれていて……でも、それも味があっていいんですよ。
小林市はアクセスが大変で、遠方から来てくれるお客さんにはホント申し訳ない気持ちもあるんですけど、面倒なことこそ普段やらないから楽しいかも。不便さも含めて、まるごと楽しんでもらいたいですね。
そもそも地方創生ってどういうことだろう?
こうして妄想してみたわけなんですけども、実際の地方創生の現場はどんな感じなのでしょう?? なんとなくのイメージはあってもよくわかっていないので、私イワクラも地方創生をしっかり勉強したいと思っていました。
そこで今回は、宮崎県都農町(つのちょう)で、地域創生に取組んでいる株式会社イツノマさんを訪ねることに!

まちづくりHOSTEL ALAで待つ渡邊さんのもとへ、全力ダッシュ!
株式会社イツノマ(以下、イツノマ)
「⼈からはじまる、まちづくり」をミッションに、町のグランドデザインや⼩中学校の総合・探究学習に取組むほか、まちづくりHOSTEL ALAの経営を通して人が交流する場づくりをしている。⼩さな町の⼩さな会社ならではの、多種多彩なプロジェクトに挑戦している。
イツノマで実際に地方創生に取組む渡邊さんにお会いし、私イワクラが考えた妄想3つを聞いてもらって、地方創生って何なのか勉強してきたいと思います!

HOSTEL ALAのトレーラーホテルの前で落ち合った二人
イワクラさんにしかできないことをやってほしい!
イワクラ:ゼー、ゼー……。渡邊さんはじめまして!
「蛙亭イワクラがもし宮崎の地方創生をガチでやるなら?」というテーマで、3つ考えてみたんですけど……。
【イワクラが宮崎の地方創生でやりたいこと】
妄想1 宮崎の食をもっと広めたい!
妄想2 お笑いイベントを宮崎で!
妄想3 バスツアーでイワクラ思い出の地へご案内!
渡邊:もうこれは、まるっと全部やってほしいです! ぜひ小林市から都農町にも来てこっちでもお笑いイベントしていただきたいですし、都農町の名所をめぐるバスツアーもしてほしいです。

イツノマの渡邊 佳さん。2022年1月より都農町へ移住し、イツノマの執行役員兼クリエイティブディレクターとして、宮崎県内のまちづくりに多数携わっている。
イワクラ:本当ですか、ありがとうございます!
でも、私が考えた妄想は「宮崎、いいとこだね」は伝わるかもですけど、そこから先の未来にはつなげられてない気もしていて。どう地方創生に広げていけたらいいのかな? と思って……。
渡邊:イワクラさんだからこそできること、いっぱいあると思うんです! たとえば、私たちイツノマは、地元の子どもたちがビジネス系の大人と会う機会はつくれるんですけど、芸人さんと触れ合える場はつくれない。

渡邊:都農町の子どもたちは、外部からの刺激があんまりないじゃないですか。だからイワクラさんが知っている面白い人をいっぱい連れてきて、子どもたちに会わせてあげてほしいです! それが、将来的に宮崎の活性化にもつながるはずです。
イワクラ:あ、そういうことでもいいのか! 面白い人、いっぱいいますよ〜〜! ちょっと前に小林市に帰ったとき、芸人仲間が何人か来てくれたんですけど、みんなが明るく盛り上げてくれて。普段あまり見ないお母さんの爆笑する姿を見られました。
あ、ほかにも芸人の友だちで、体重が180キロのやつとかもいるんですよ。連れてきたら子どもたちがビックリするかも(笑)。

渡邊:まさにイワクラさんしかできないと思います!
あとは、ぜひどうやって芸人さんになったのか話してあげてほしいです! っていうのも、都農町の子どもたちに将来の夢を聞くと、みんな素敵なんですけど、身近な職業のことしか言えないんですよね。学校の先生とか、看護師とか。だから、芸人さんのお仕事とか、いろんな選択肢を知ることで、子どもたちの可能性も広がっていくんじゃないかなと思います。
イワクラ:なるほど~! 自分にできること、少しずつ見えてきた気がする!

東京に住んでいるけど、地方創生にかかわれるの?
イワクラ:でも正直、地方創生ってよくわかっていなくて。地方は人口が減って空き家が増えているから、県外の人に「移住」を勧める……くらいのことしかイメージできないんですよね。
でも、自分も東京に住んでいるし、簡単に「移住しましょう」とは言えない。どうしたらいいんだろう。本当は、宮崎から通いながら仕事ができたらいいんですけど……。

渡邊:私は県外からの移住者なんですけど、私も含めて移住者がずっといるかというと結構難しいというか……。移住者だけではなく、町で生まれ育った人も、結婚や仕事など、人生の転機で町から出てしまう人が多いんです。都農町には高校もなくて、働く場所も少ないので、若い人たちが出て行ってしまうのはしょうがないんですよね。
だから「移住」だけをゴールにするよりも、地元に戻りたい人や、イワクラさんみたいに2拠点で活動したい人が、気軽に戻ってこられるような選択肢を増やせたらいいなと最近思っていて。
やっぱり若い人たちが地元を離れる背景には、仕事の選択肢が少ないこともあると思うんです。
だからその解決策のひとつとして、イツノマがやっているまちづくり教育では、中学生が会社をつくったり、お金を稼いだりする体験を通して、未来の選択肢を増やしてもらえたらと考えています。中学を卒業したあとに一度都農町を離れたとしても、将来、大人になったときに都農町に戻ってきて、活躍するイメージにつなげられたらいいなって。でも、まだまだ全然足りていないと思っています。

イツノマのまちづくり教育で、駄菓子屋を運営している中学生の様子。中学生が仕入れから利益計算まで行っており、将来大人になったときに、まちづくりの当事者として活躍する未来の選択肢につながるのだそう。
イワクラ:私も小林市にいた頃は、大人とかかわる機会が少なくて、「会社を立ち上げる」選択肢は考えもつかなかった。自分にはできるわけない、ってあきらめモードになっちゃう。
だからこそ、イツノマさんの活動はめっちゃ素晴らしいと思います。もし、自分も同じ年頃のときにそんな経験をしていたら、考え方や未来が変わっていたかもしれません!

イツノマが都農町役場のまちづくり課とともに作成した、都農町のこれからの100年を描いた「つの未来マップ」。理想とする町の未来像をグランドデザインし、町民参加型のワークショップを実施した。

イツノマが作成した、「都農町アクション100」のパンフレット。「つの未来マップ」を実現するために必要なアクションを、町民200名から意見を聞いて整理。経済・デジタル・ゼロカーボンなどのテーマ別に分かれている。
渡邊:ありがとうございます! 商店街活性化のために都農町の中学生と一緒に取組む活動があるのですが、また来年度も続ける予定なんです。
そのイベントのなかに、中学生が考えた「ステージに上がってくれた人をすごく褒めます」っていう企画があって。もしイワクラさんにかかわってもらえるなら「とにかく笑わせます」みたいなのも面白いかなって思いました(笑)。
イワクラ:ぜひ! すごいでっかいやつとか、すごいマッチョとか、私が面白いやつをたくさん連れてきます~!

地方創生は等身大でいいかも?
こうして、イツノマの渡邊さんに、いろいろと話を聞いてきたわけなのですが……。
地方創生って頭良くないとできないというか、たくさん勉強して知識がないとかかわれないと思っていたんですけど、渡邊さんと話して、自分だからできることがあるんだと思いました。

「どうして芸人になったのか」を伝えることとかが、地方創生に結びつけられるかもって気づいて、前向きになった!
あと、今回話を聞いたイツノマさんは地域の人や子どもたちと一緒に活動されているのが印象的で。そこはいままで私はあんまりできていなかったので、これから地域の人たちと一緒に何かやりたいって思いました。
同じ志の人たちはいっぱいいるし、「やりたいです!」って言ったら、YouTubeのスタッフさんみたいに、きっと助けてくれる人がいると思うので、周りの人たちを巻き込んでいきたい!
それと、お笑いライブやるなら、その地域の子どもたちと触れ合える場をつくれたらいいなと思ったので、もっとやり方を考えたいですね!

都農町の地域クラブ まちづくり部の駄菓子屋へ

都農町の中学生たちと交流!
これからはもっと宮崎の人に会いたい!
宮崎は食も自然も人も本当に素晴らしい場所なのですが、暮らしている人にとっては「別に普通だし〜」ってあんまり外に発信してないところもある気がします。なので、私イワクラが感じる宮崎の魅力は、いままでどおりYouTubeとかで出していきたいと思います。
あ、これまではおいしい食べ物メインで宮崎の魅力を紹介していたので、これからはもっと宮崎の人に会う機会をつくろう! と思いました。
今回イツノマの渡邊さんとお話して、もっともっと宮崎に住んでいる方とお話してみたいなって。それが宮崎の活性化につながるかも。
これからはもっと宮崎の人に会いに行くぞ~~~! オ〜〜〜!!!

ちなみに、私のYouTube『宮崎よかとこチャンネル』でも、今回話を聞いたイツノマさんの取組みを深掘りした対談や、中学生が運営する駄菓子屋に遊びに行った動画をアップしています!
よければ合わせて観てみてください〜〜!
Credits
- 取材・執筆
- 横田ちえ
- 撮影
- 作本奈寧子
- 編集
- 森谷美穂、牧之瀬裕加(CINRA,Inc.)