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横山由依、綿矢りさ、中村佳穂が見つめる、京都。地域の魅力を紐解く連載vol.3

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全国47都道府県のなかからひとつの地域を取り上げ、ゆかりのある方にその地域の魅力を聞く「47 Local Stories」。

第3回は「京都府」。今回は京都府にゆかりのある3名——俳優の横山由依さん、ミュージシャンの中村佳穂さん、小説家の綿矢りささんがアンケートに答えてくれました。地元の思い出や、何気ない日常のなかで生まれたインスピレーションとは? 観光情報サイトやSNSには載らない、実体験をとおして見える京都府のリアルを教えてもらいます。

横山由依[俳優:木津川市出身]

横山由依さんのポートレート

横山由依さん
俳優。2009年にAKB48の9期生オーディションに合格。第2代AKB48グループ総監督も務め、卒業後は俳優として舞台や映像作品など多方面で活躍。京都やましろ観光大使として、地元・山城地域の魅力発信にも積極的に取り組んでいる

―地元で好きな場所はどこですか?

地元である木津川市に住んでいた頃は、いつも外に遊びに行っていました。団地のなかにあるような小さな公園から、大自然に囲まれた大きな公園まで、公園が豊富な地域だという印象があります。

なかでも、両親がテニスをするときに一緒に連れて行ってくれていた木津川台公園は、特に楽しい場所でした。

とても長いローラー式の滑り台があり、ダンボールを敷いて何度も滑った思い出があります。敷地も広く、駐車場から広場へと続く階段を下るときにとてもわくわくした気持ちになりました。大きな池のあるエリアもあって、遊具も自然も満喫していました。

―京都やましろ観光大使として活動するなかで、「ここ、もっと知られてほしいな」と感じた山城地域の推しポイント(魅力)を教えてください。

国宝や重要文化財がたくさんあるということです。

宇治市にある平等院鳳凰堂は、10円玉に描かれていることでも知られる、山城地域の国宝です。実際に足を運ぶと、その威厳ある佇まいと幻想的な美しさに圧倒されます。

ほかにも、海住山寺浄瑠璃寺など、さまざまな歴史的建造物に出会うことができ、丁寧に守り継がれてきた歴史を感じられます。

伝統と新しさが、自然に共存している地域だと感じています。

平等院鳳凰堂を背景に、池のほとりに立つ横山由依さん

平等院鳳凰堂にて(画像提供:横山由依さん)

音声ガイドの案内パネルの前で、チケットを手にポーズをとる横山由依さん

2023年に奈良国立博物館で開催された特別展『聖地 南山城 ―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝―』にて。横山さんは音声ガイドのナビゲーターを務めた(画像提供:横山由依さん)

横山

山城地域は茶畑が多くお茶も美味しいのですが、景色もとても美しく、心が癒されます

―今後、山城地域が変化していくなかでも、ずっと残ってほしいと思うものは何でしょうか? また、ご自身として、これから山城地域とどのようにかかわり続けていきたいと考えていますか?

歴史ある場所や建物はもちろんですが、山城地域に暮らす方々のあたたかさも、これから先ずっと残ってほしい大切な魅力だと思います。

京都でお仕事をさせていただく際にも、優しい言葉をかけてくださることが多く、地元を誇りに思う気持ちが伝わってきます。

私自身、大人になったいま、あらためて山城地域の素晴らしさを実感しています。自分の夢に向かって挑戦を続けながら、これからも地元とより密に関わり、その魅力を伝えていけたらうれしいです。

中村佳穂[ミュージシャン:京都府を拠点に活動]

中村佳穂さんのポートレート

中村佳穂さん
ミュージシャン。京都府を拠点に活動し、2018年発表のアルバム『AINOU』が高い評価を受ける。細田守監督の映画『竜とそばかすの姫』では主人公・すず/ベルの声と歌唱を担当し、その透明感のある歌声が話題となった

―京都で好きな場所はどこですか?

乙訓郡大山崎町にあるアサヒグループ大山崎山荘美術館です。

最寄り駅を降りてすぐ、山道のほうに向かって10分ほど木漏れ日のなかを抜け、ちょっと息が切れる頃にたどり着くのがこの美術館です。

もとは個人所有の別荘だったこともあって、向かう道中は自宅に戻るような感覚になります。なんというか、人が少ないタイミングだと、ボーッとすることができる。暗いわけではないのに、静か。綺麗なのに焦らされず、時間が佇んでいる。その空気が好きで、常設のモネの《睡蓮》をよく眺めに行っていました。

近くにある歴史的建築物「聴竹居」も、要予約ですが、似た空気でおすすめです。

自然に囲まれたアサヒグループ大山崎山荘美術館の建物

アサヒグループ大山崎山荘美術館(画像提供:中村佳穂さん)

イギリスのチューダー・ゴシック様式を取り入れた建築とステンドグラスが印象的なアサヒグループ大山崎山荘美術館の内観

本館の階段踊り場には、ヨーロッパから取り寄せたというステンドグラスが配されている(画像提供:アサヒグループ大山崎山荘美術館)

睡蓮が浮かぶ池と洋館が調和する、アサヒグループ大山崎山荘美術館の敷地内の風景

睡蓮の花が咲く池のほとりに建つ「夢の箱」(山手館)。建築家・安藤忠雄による設計(画像提供:アサヒグループ大山崎山荘美術館)

―京都のカルチャーや人々とのかかわりが、ご自身の音楽活動にどのように影響していると感じますか?

京都の人は、街を自分のものと認識して長く住んでいる人が多い。学生や観光客の出入りが多いにもかかわらず、街としての「狭さ」のなかに、コンパクトにまとまっている。コミュニティのなかで生活が完結できる絶妙な規模の街なので、学生の心意気のまま大人になれる。

「狭さ」から生まれる、大きな社会へは向かっていかない感覚。これが京都の面白さを生んでいる鍵な気がしています。

だから私は、日々の暮らしや仕事のなかで何かを選び、決断しなければならないときに、「わが心の京都マインドは、果たして本当に喜んでいるかな?」と、自分に問いかけているのかもしれません。

―音楽を通じて日本のさまざまな地域やカルチャーと、これからどのように関わっていきたいと考えていますか?

京都に限らず、面白い文化や個人は、日本全国に本当に果てしなく、たくさん点在していると思っています。

そうしたカルチャーを一気にまとめることができるのが、「歌」や「音楽」のすごみだなと感じていて。

最近では自分でお祭りのような音楽イベントを企画することもできるようになってきました。自分でつくった音楽を引っ提げて、もっと深く広く、日本のさまざまな土地でカルチャーを混ぜ合わせるようなイベントをしていきたいですね!

綿矢りさ[小説家:京都市出身]

綿矢りささんのポートレート

綿矢りささん
小説家。2001年『インストール』で文藝賞受賞。2004年『蹴りたい背中』で芥川賞受賞。2025年には京都と東京を舞台にした長編恋愛小説『激しく煌めく短い命』を刊行した[撮影:深野未希(文藝春秋)]

―京都で好きな場所はどこですか?

鴨川が好き。同じ鴨川のほとりでも、場所によって、ずいぶん雰囲気が違う。私は特に北区の山奥に続いてる鴨川が好き。北大路や北山の近くの鴨川は、歩いてる人や楽器の練習をしてる人、お弁当を食べている人、遊ぶ子ども、犬の散歩をする人などいて、にぎやかだ。山に向かってもっと奥に入っていくと、人が段々減り、さびしいがその分、緑の自然も川も楽しめるエリアになる。長めの散歩ができるほど体力のある日に行くのがオススメ。

―2019年に発表された『手のひらの京』では、生まれ育った京都が物語の舞台として描かれています。ご執筆をとおして、「書くことであらためて気づいた京都らしさ」や「京都ならではの魅力」はありましたか。

のんびりしているところが魅力だなと思った。時間が間伸びしていて、山々に囲まれた盆地なところが少し閉塞感があるなと、住んでいたときは思っていた。でも物語の舞台として書いてみると、のんびりして守られてる雰囲気のところが、京都の魅力なんだなと気づいた。そういうムードだからこそ、登場人物たちも終始警戒せず、人なつっこく生き生きと動いていた。フィクションでも京都という場所に深い影響を受けながら物語が進む。

―文化や表現の土壌として見たとき、京都がこれからも大切にしてほしい魅力は何だと思いますか。

つい寺とか神社とか庭とか、昔の人の作った歴史ある人工物に価値があると思いがちだし、価値は実際にあるし、状態よく保存し続けていくのも大事だと思うが、同じくらい京都の自然も保存するのが良いと思う。

自然には意外と量だけじゃなく、質もかなり重要なんだと近ごろ気づいた。東京のコンクリートジャングルで暮らしてると、自然に触れたい、特に京都ののどかなうえ洗練された美しい自然に触れたいなと渇望する。

地域のストーリーは、一人ひとりの記憶のなかに

歴史的建造物の幻想的な美しさ、コンパクトな「狭さ」から生まれる街の面白さ、山奥へと続く鴨川の景色——。そうした場所や風景のなかで過ごしてきた時間が、少しずつ愛着として積み重なり、いまの表現や活動につながっていることが感じられました。

地域に根づく記憶をたどると、ただ訪れるだけではわからない、その地域のリアルな魅力が見えてくる。次回はどの地域のどんな記憶と風景に出会えるでしょうか。どうぞお楽しみに。

この記事の内容は2026年2月19日掲載時のものです。

Credits

編集
包國文朗、牧之瀬裕加(CINRA, Inc.)

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